半減期から定常状態を予測する 蓄積率を用いたやり方 オススメ参考書

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薬剤師の強みや武器の1つは何と言っても薬物動態ですよね。

しかしながら現場ではあまりゆっくりとPubMedで文献を探す時間もないですし、添付文書から情報を読み取れるに越したことはありません。

定常状態ではどんな濃度になっているのか、推測する方法をご紹介します。

何かを効率よく覚えたい時には
効率の良い勉強法


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半減期t1/2とは?薬効との関係は?

半減期とは、薬物の血中濃度が半分になるのにかかる時間です。

例えば、静脈注射で最初10ng/mLあった薬剤が、2時間経つと分解されて5ng/mLになります。

4時間経つと5ng/mLの半分、2.5ng/mLになります。(半減期の2倍経過)
6時間経つと2.5ng/mLの半分、1.25ng/mLになります。(半減期の3倍経過)
8時間経つと1.25ng/mLの半分、0.625ng/mLになります。(半減期の4倍経過)
10時間経つと0.625ng/mLの半分、0.3125ng/mLになります。(半減期の5倍経過)

ここで、10時間後の濃度が、最初の濃度の何割にあたるかを計算すると、
0.3125/10×100=3.125%となります。

3%程度というと、ほとんど残っておらず、薬効も発揮しないと考えられます。
よって、半減期の4~5倍経過すると薬効はないものと考えることが出来ます。

 

※注意

この理論は全ての薬剤にあてはまるわけではありません。
コニール®(ベニジピン)は分配係数3.79と脂溶性が高いために血管平滑筋の細胞膜に対する親和性が高いため、降圧効果は薬物血中濃度と相関することなく長時間持続します。

よって、作用時間と定常状態は必ずしも連動していないので注意。

つまり、それぞれの薬剤の作用の特性を見る必要があります。

定常状態とは?

薬を投与した後、薬が代謝されて完全に消失する前に、繰り返し投与すると、前の薬がまだ血中に残っているので蓄積していきます。

一回投与した後の血中濃度が10とすると、半減期の時間が経った後では半分の5になりますが、そこに再投与すると、5+10=15と蓄積していきます。

しかし蓄積するだけではなく、代謝されたり排泄されたりして、体内から消失していきます。下の図のように血中濃度はぴょんぴょんジャンプしているように動きます。

体内に入ってくる速度と、代謝されて消失していく速度が同じになり、最高血中濃度と最低血中濃度の間を往復するようになります。この状態を定常状態といいます。

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テオドール錠®100、200mg 添付文書(第18版)より引用

薬剤師国家試験では、繰り返し投与の式Css×CLtot=F×D/τから算出してましたよね。

Css:平均血中濃度
CLtot:全身クリアランス
F:バイオアベイラビリティ
D:投与量
τ:投与間隔

でもこれだと全身クリアランスとバイオアベイラビリティをインタビューフォームから調べてこないと計算できません。

患者さんと話してる時に瞬時に調べられるかというと厳しいですよね。

そこで蓄積率というものを使います。

 

蓄積率とは?どう使う?

繰り返し投与した時の薬物の血中濃度(Cn)は、最初の血中濃度(C0)の定数倍に近づいていきます。

Cn=R×C0

この定数R蓄積率といい、以下の式で表されます。

蓄積率=1/(1-e^{-Ke・τ})
Ke:消失速度定数
τ:投与間隔

乗数が含まれており、関数電卓があってもいちいち計算する気が起きませんよね。

そこで半減期=0.693/Keを用いると、蓄積率は、半減期と投与間隔だけで求まります。

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半減期投与間隔(τ)で計算した表です。

半減期を投与間隔で割った数を上の段で見て、その時の蓄積率が下の段になります。

例えば、半減期24時間で、1日1回投与=投与間隔24時間の薬剤は、蓄積率が2なので、定常状態に達し、その濃度は最初の最高血中濃度の2倍になることがこの表からわかります。

一方で、半減期6時間で、1日1回投与=投与間隔24時間にすると(半減期×4<投与間隔)、蓄積率1で定常状態にならず、初回の血中濃度と変わりません。

こちらの記事で、ロキソニンを実際に計算しています。
ロキソニンと授乳、安全性

これまでの知識をまとめると、
・半減期の4~5倍でほとんど血中から薬物が消失すること
・完全に消失する前に繰り返し投与すると蓄積して定常状態に達する

これらのことから、

「半減期の4倍より投与間隔が短いならば定常状態に達する」ことが導けます。

半減期×4>投与間隔
変形すると、4>投与間隔/半減期

 

※要注意!蓄積率は1-コンパートメントモデルに従う薬物にしか使えない!!

残念ながら、上記の考え方は1-コンパートメントモデルで説明できる薬物にしか使えません。
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1-コンパートメントモデル:循環血液中の薬と、臓器や組織中の薬が速やかに濃度平衡に達する場合

2-コンパートメントモデル:薬が循環血液中から臓器や組織への分布が完了するまでに時間がかかる場合(分布相がある)

それらの見分け方を次で紹介します。

見分けるには添付文書の血中濃度グラフを見る!

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アシノン錠®75、150mg インタビューフォームより引用

片対数グラフでおおよその見当をつけられます。

1-コンパートメントモデルに従う薬剤は、ほぼ1本の線に乗ります(アシノン)。
2-コンパートメントモデルに従う薬剤は、途中で折れ曲がるため直線に乗らない部分が出てきます。

 

オススメ書籍

実際に薬局で使える事例が実例として紹介されているので現場でも使えます!

また、大学での薬物動態学をわかりやすく解説してくれている本なので、薬学生や、基礎医学として薬理学を学んでいる医学生にもおススメです!

 

 

こちらも添付文書から必要な情報を読み取るためのノウハウが記載されている良書です!薬剤師1年目の時に読んで、添付文書にはこんなにも活用できる情報があったことを知って驚きました!



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