定期試験にも国家試験にも問われやすい結核治療薬ですが、薬の名前がパッ出てこないという声をよく聞きます。
薬学部時代につくったゴロや覚え方を紹介します。
まずは略語を覚える
まずは略語を覚えましょう。これは発音と近いのですぐに覚えられると思います。
RFP:リファンピシン
EB:エタンブトール
SM:ストレプトマイシン
PZA:ピラジナミド
これが覚えられれば治療薬を一発で思い出せますし、副作用もこれからすぐ連想できます。
投与方法
水溶性が高いアミノグリコシド系(ストレプトマイシン)は消化管からの吸収が悪いので筋肉注射です。ほかは経口投与です。
日本結核病学会 結核症の基礎知識(改訂第 4 版) より引用
この治療も略語を覚えたらシンプルです。キードラッグはRFPとINHで6ヶ月投与。耐性菌が出ないようにPZAやEBを2ヶ月併用します。
二文字の薬剤は同じく二文字の薬剤で置き換えられます(EB→SM)。
そしてPZAの肝障害が出やすいと懸念される高齢者や肝疾患を持つ患者さん、PZAの安全性が確認できてない妊婦の方は最初からB法で開始します。
抗結核薬のゴロ合わせ
結核は過去の疾患ではありません。現在でも毎年およそ18000人が新たに発症し、およそ1900人が亡くなっています。それだけ重要な疾患なのです。
「prise」とは「〜を重要であるとみなす」という意味の英単語です。
長くなりましたが、PRISEでPZA、RFP、INH、SM、EBを思い出せると思います。
副作用の覚え方
略語の文字から代表的な副作用を連想します。強引なものもありますが笑
副作用については、これくらい覚えておけば十分だと思います。
豆知識ですが、RFPを服用すると、涙や唾液、尿などの体液がオレンジ色に染まります。このことをしっかりと患者さんに伝えておかなければ不安から服用をやめてしまう恐れがあるので注意です!
排泄経路
こちらもざっくりと押さえておきましょう。
それ以外は腎排泄型
上記の通り、SMはアミノグリコシド系です。
アミノ基とグリコ(糖)の構造ですので、どちらも栄養ドリンクとかに含まれているような成分→水溶性→腎排泄→腎から出て行くときに腎毒性=腎障害があります。
必ず腎機能もチェックするようにしてください。
他の薬との相互作用
結核はほとんどが不顕性感染で発症しませんが、高齢者など免疫力が低下すると再燃して発症します。また高齢者は合併症を複数持ち合わせていることも多いため、相互作用についても知識を持っておく必要があります。
医師国家試験でも問われていました。
第111回医師国家試験 E31より引用
抗結核薬のうち副腎皮質ステロイドの効果を減弱させるのはどれか。
a ピラジナミド
b イソニアジド
c リファンピシン
d エタンブトール
e ストレプトマイシン
これは薬剤師国家試験でも問われる内容ですので、簡単に説明しておきます。
CYP(シトクロムP450)という薬物代謝酵素がありますが、そのなかで存在率の高いCYP3A4は以下の薬剤で誘導されます。
CYP3A4を誘導する薬剤
・リファンピシン
・カルバマゼピン
・フェノバルビタール
・フェニトイン
リファンピシン以外は、てんかんの部分発作に用いられる治療薬です。なのでこう覚えましょう。
CYP3A4を誘導する薬剤=抗てんかん薬+RFP
一方で、ステロイドはCYP3A4で代謝されるので、そのCYPがRFPによって誘導されるため分解が促進され薬効が減弱します。
このように、リファンピシンは薬物相互作用が多い薬剤です。
ということで答えはCです。
膠原病などでステロイドを服用している方ではステロイドの代謝が上がりステロイド量が足りなくなって抗炎症作用が減弱したり、副腎クリーゼのリスクが上がります。
繋げて理解しましょう
リファンピシンはCYPを誘導するため相互作用に注意が必要と上述しましたが、CYPというタンパク質を誘導するためにはDNAに働きかける必要があります。
DNAへ働きかけるために細胞内へ入る必要がありますが、RFPは脂溶性のため細胞膜を通過します。→高級脂肪酸であるミコール酸を纏っている結核菌に適応がある。
脂溶性だから肝代謝型→肝障害でやすい→血小板減少しやすい。
国家試験問題で理解度をチェック!
医師国家試験 95A99
抗結核薬と副作用の組み合わせで誤っているのはどれか。
a イソニアジドー末梢神経障害
b リファンピシンー心臓刺激伝導障害
c エタンブトールー視神経障害
d ピラジナミドー肝障害
e ストレプトマイシンー聴力障害
以上となります。
少しでも参考になれば嬉しいです。
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