緑内障に抗コリン薬が禁忌というのは薬学部でも医学部でも習う基本的な知識ですが、解剖学・薬理学的に見直してみました。
薬理学⇨解剖学
薬理学
まず抗コリン薬というのは、アセチルコリン受容体のサブタイプであるムスカリン受容体に拮抗する薬剤です。副交感神経由来のアセチルコリンが受容体に作用するのをブロックします。
次に考えるのは、どこのムスカリン受容体をブロックするのかということですが、眼で副交感神経に支配されているのは瞳孔括約筋です。
解剖学
字が下手なのはご了承ください…
前面と側面の図を出しています。紫色が瞳孔括約筋です。
この筋は副交感神経支配なので、アセチルコリンで収縮しますが、抗コリン薬によって弛緩します。それにより瞳孔が大きくなります=散瞳。
抗コリン薬で弛緩すると
瞳孔括約筋が収縮しているとピンと張っていて、上の図のように水晶体との距離は保たれていますが、弛緩するとだらんとして水晶体に近接してしまいます。
平常時は房水は毛様体から産生されて虹彩と角膜の間=隅角のシュレム管を介して排出されます。
しかし抗コリン薬によって瞳孔括約筋が弛緩すると房水の流れは邪魔されて、排出されにくくなります。そのため眼圧上昇のリスクがあります。
全ての緑内障に禁忌ではない
緑内障は開放隅角緑内障と、閉塞隅角緑内障に大別されます。
文字の通り、隅角は解放されているものの目詰まりを起こしている病態と、隅角が閉塞している病態です。
開放隅角緑内障では眼圧は軽度高値であり、進行も緩徐です。
閉塞隅角緑内障は眼圧は高値であり、隅角が閉塞すると急激に眼圧が著しく上昇(=急性緑内障発作)することがあります。
図を見ていただくと、赤丸で描いた房水が流れにくい箇所が、開放と閉塞で異なることがわかると思います。
開放隅角緑内障では一番出口に近い隅角は開放されているために、抗コリン薬を使用して眼圧が上昇したとしても軽度であり臨床的に問題とはなりにくいです。
一方、閉塞隅角緑内障では治療が行われていない場合は急性緑内障発作を起こす危険があります。
しかしながら閉塞隅角緑内障と診断した場合そのまま放置せず、レーザー虹彩切開術などの外科的処置を行い、眼圧がコントロールされていますので抗コリン薬を使用しても発作は生じにくくなっています。
まとめ
抗コリン薬で問題となるのは閉塞隅角緑内障で外科的処置を行なっていない場合のみ!
実体験ですが、緑内障の患者さんにPL顆粒(プロメタジンに抗コリン作用あり)が処方されていました。患者さんに伺っても覚えてないとのことだったのでかかりつけの眼科の先生に問い合わせをして上記の内容をわかりやすく教えていただきました。
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