抗菌薬って難しいですよね。よく質問されるので記事にまとめてみました。
抗菌薬の排泄経路を覚えておくと、投与量調整や禁忌なのか判断することができます。
ゴロや覚え方を紹介します。
まずは概観
実用性の高い、腎排泄か否かで分けると見通しが良いと思います。
腎排泄(殺菌性) | 肝代謝(静菌性) |
---|---|
濃度依存性 | マクロライド系 |
アミノグリコシド系 | テトラサイクリン系 |
ニューキノロン系 | クロラムフェニコール |
時間依存性 | リンコマイシン系 |
βラクタム系 | |
グリコペプチド系 |
ちなみにβラクタム系は、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系の総称です。
濃度依存性や時間依存性という分類は、腎排泄型に適用されます。
腎排泄型の覚え方
グリコ=アミノグリコシド系+グリコペプチド系
グリコ=糖なので水に溶けるイメージです。
ニューキノロン系は後述しますが、語尾が○○フロキサシンなので、風呂→水と覚えてしまいましょう。
腎排泄型は濃度依存性と時間依存性(βラクタム系)に大きく分けられます。
濃度依存性の覚え方・ゴロ
・アミノグリコシド系
・ニューキノロン系
これらの薬剤は1日1回、ドーンと血中濃度(Concentration max:Cmax)を上げた方が効き目がいいことがわかっています。
時間依存性の覚え方・ゴロ
βラクタム系・グリコペプチド系が該当します。細胞壁合成阻害という作用機序が共通ですね。
こちらは細胞壁の材料と間違われて取り込まれて合成を阻害するのですから、常に血中濃度を保っていた方が良さそうですよね。
そのため1日複数回投与が望ましいとされます。
肝代謝型のゴロ
タンパク合成阻害の薬剤はほとんどが肝代謝です。
「アクマテリン」から腎排泄型のアミノグリコシド系を除けば肝代謝型です。この覚え方ならついでに作用機序までおさえることができます。
妊婦・新生児へ投与注意な薬剤
ニューキノロン系→催奇形性・軟骨形成障害
テトラサイクリン系→歯牙黄染
クロラムフェニコール→グレイ症候群、再生不良性貧血
※βラクタム系とマクロライド系は妊婦投与OK
各系統の覚え方
βラクタム系の作用機序:細胞壁合成阻害
ペニシリン系
妊婦使用可能
【副作用】
アナフィラキシーショック
セフェム系
【副作用】
ジスルフィラム様作用(ALDH2阻害→アセトアルデヒド蓄積)
→セフメタゾール、セフォペラゾンなど
【相互作用】
吸収低下:鉄剤との併用(セフジニル)
カルバペネム系
耐性菌対策のため、使用用途は限定的!
→壊死性筋膜炎、ESBL陽性の耐性菌、発熱性好中球減少症などのヤバい時のみ!
【相互作用】
てんかん発作:抗てんかん薬のバルプロ酸との併用で血中濃度低下させる
アミノグリコシド系
スト:ストレプトマイシン
アミ:アミカシン
カナ:カナマイシン
元気:ゲンタマイシン
ある:アルベカシン
作用機序:タンパク合成阻害
【副作用】
腎障害←「グリコ=糖=水に溶ける」
第Ⅷ脳神経障害←「ミミノグリコシド」
重症筋無力症に慎重投与←神経筋遮断作用
腎障害や聴神経障害のためTDMの対象
ニューキノロン系
作用機序:核酸合成阻害
【副作用】
関節・腱異常:妊婦、授乳婦禁忌
【相互作用】
吸収低下:2価の金属イオンとキレート形成
→Caとキレート形成→歯・骨の着色、関節軟骨形成異常
→トスフロキサシン以外は小児に不適
痙攣誘発:酸性NSAIDsとの併用
低血糖:糖尿病薬との併用
グリコペプチド系
グリコ:グリコペプチド系
定:テイコプラニン
番:バンコマイシン
作用機序:細胞壁合成阻害
【副作用】
レッドネック症候群
腎障害
第Ⅷ脳神経障害
消化管吸収は悪い→逆手にとってバンコマイシンは偽膜性腸炎に経口投与
腎障害や聴神経障害のためTDMの対象
クロラムフェニコール
クロラムフェニコール
作用機序:タンパク合成阻害
【副作用】
再生不良性貧血、グレイ症候群
マクロライド系
作用機序:タンパク合成阻害
【副作用】
消化器症状
肝障害
妊婦使用可能
テトラサイクリン系
作用機序:タンパク合成阻害
【副作用】
歯牙黄染・エナメル形成不全:8歳未満、妊婦禁忌
吸収低下:Fe、Ca、Mgキレート形成するため
リンコマイシン系
作用機序:タンパク合成阻害
【副作用】
消化器症状
国家試験問題で理解度をチェック!
医師国家試験 104G2薬物動態と薬力学理論とを考慮して抗菌薬を使う場合、1日投与総量を同じにした際、分割投与よりも単回投与が治療効果をあげるのはどれか。a キノロン系薬b ペニシリン系薬c カルバペネム系薬d セファロスポリン系薬e テトラサイクリン系薬
濃度依存の薬剤を選べばいいので、「ノ」が付く系統を選びましょ。
医師国家試験 112A37
49歳の男性。高熱を主訴に来院した。3日前からの発熱、咳嗽および膿性痰のために受診した。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。体温39.5℃。脈拍116/分、整。血圧128/82mmHg。呼吸数24/分。右肺にcoarse cracklesを聴取する。血液所見:白血球19,200(桿状核好中球4 %、分葉核好中球84 %、単球2%、リンパ球10%)。血液生化学所見:AST 48U/L、ALT 42U/L。CRP 19.8mg/dL。腎機能は正常である。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。急性肺炎と診断し、入院させてスルバクタム・アンピシリン合剤の投与を開始することにした。
1日の投与量を同一とした場合、この患者に対する投与方法として最も適切なのはどれか。
a 1回経口投与
b 1回筋注
c 1回点滴静注
d 2回点滴静注
e 3回点滴静注
発熱、浸潤影、膿性痰、白血球とCRPの上昇より細菌性肺炎と考えられます。
アンピシリンは「〜シリン」なのでペニシリン系。βラクタム系は時間依存性のためもっとも頻回に投与しているeが正解となります。
豆知識
濃度依存性のニューキノロン系のレボフロキサシンですが、以前は100mg錠が1日3回投与となっていました。
間違った用法、用量では効果が得られず耐性菌が出てしまうので要注意です!
医師国家試験 94E35
50歳の男性.身長165cm,体重60kg.血清生化学所見:尿素窒素65mg/dL,クレアチニン4.8mg/dL.肝機能は正常.
この患者に抗菌薬を投与する場合,通常の用法・用量で良いのはどれか.2つ選べ.
a ゲンタマイシン
b ストレプトマイシン
c バンコマイシン
d エリスロマイシン
e リファンピシン
高度な腎機能障害があるので腎排泄型は用量を減らしたり、投与間隔を空けなければなりません。一方、肝機能に問題ないので肝代謝型は通常の用法用量でOKです。
ゴロでゲンタマイシンとストレプトマイシンはアミノグリコシド系→腎排泄型とわかります。
バンコマイシンもグリコペプチド系で腎排泄型。
〜ロマイシンなのでマクロライド系→肝代謝型。
リファンピシンは抗結核薬です。
以上より肝代謝型ですね。
医師国家試験 100G114
腎不全患者で投与量を減らすのはどれか。
a バンコマイシン
b リファンピシン
c ニフェジピン
d フロセミド
e リドカイン
医師国家試験 106G10
末期腎不全患者に対し、常用量を投与可能なのはどれか。
a ST合剤
b オセルタミビル
c ミノサイクリン
d レボフロキサシン
e カルバペネム系抗菌薬
腎不全に対して減量不要ということは、つまり肝代謝型を選ばせる問題です。
a ST合剤は海外では尿路感染症に使われることを頭の片隅に置いておくと、腎排泄だと推測できます。
b 商品名タミフル®️です。高齢者では腎機能が低下していることが多く、用量調節が必要なので調剤が大変でした。
c ミノサイクリンは〜サイクリンなのでテトラサイクリン系ですね。肝代謝型なので用量調節不要です。
d 〜フロキサシンなので風呂→水→腎排泄型と類推できると早いです。
e 〜ペネムなのでカルバペネム系。βラクタム系なので腎排泄型です。
オススメ書籍
わかりやすい説明で読みやすく、かつ深みに入り過ぎないので入門書として最高です。症例問題で理解度を確認できるのもオススメのポイントです。そして薄くて読み進めやすく、なにより安いです!買って損はないと思います。
以上となります。
最後まで読んでいただき有り難うございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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