COPD患者さんの急な発熱、サチュレーション低下は怖いですよね。
咳や痰、息切れなどの症状が細菌やウイルスの感染によって急激に悪化することを急性増悪といいます。
今回はそんなCOPD増悪に用いる抗菌薬について記事にしてみました。
薬剤師国家試験問題にチャレンジ!
医師国家試験でも抗菌薬の選択は問われることはあまりないので新鮮でした。
第102回 薬剤師国家試験 問200より引用
64歳男性。COPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断され、チオトロピウム臭化物水和物(1日5μg)とサルメテロールキシナホ酸塩(1日100μg)の吸入を継続的に行っていた。日常の薬物治療のアドヒアランスは良好であった。
受診から2年後、この男性は呼吸困難と38.1℃の発熱を訴え、肺からはラ音が聞こえたため感染症が疑われ緊急入院となった。パルスオキシメーター(オキシメトリー)で測定したところSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は92%であった。
喫煙歴44年であり、若い頃から1日30~40本吸っていた。COPD発症を機会に禁煙指導を受けていたが、1日10本程度吸っていたという。
酸素吸入の他に、憎悪期の薬物治療として医師は以下に示した処方薬と注射用抗菌薬を投与することとした。
(処方)
アミノフィリン注射液250mg
注射用プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム20mg
上記を生理食塩液250mLに溶解し、点滴静脈内投与問200
感染症の疑いにより投与される注射用抗菌薬として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 アジスロマイシン水和物
2 リネゾリド
3 アルベカシン硫酸塩
4 ベンジルペニシリンカリウム
5 バンコマイシン塩酸塩
肺のラ音(おそらくcoarse crackles)と発熱、呼吸困難とSpO2の低下から急性増悪が考えられます。
COPDの増悪時の薬物療法はABCです。
Bronchodilators:気管支拡張薬
Corticosteroids:ステロイド(経口・注射)
本来、Bの気管支拡張薬には短時間作用型β2刺激薬を用いるのですが、今回はテオフィリン製剤を用いているようです。
増悪の原因菌としては、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスなどが多いため、抗菌薬はこれらをスペクトルに含むものを選ばなければなりません。ペニシリン系、第3、4世代セフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系が推奨されます。
まずはMRSA用の抗菌薬である2、3、5を除外します。残るはアジスロマイシンとベンジルペニシリンです。
ベンジルペニシリンは主に梅毒や感染性心内膜炎、細菌性髄膜炎で用いられるものです。肺炎球菌には効きますが、βラクタマーゼを産生するインフルエンザ桿菌やモラクセラには効きません。本来はβラクタマーゼ阻害薬配合のペニシリン(アンピシリン・スルバクタム合剤など)を用います。
ベンジルペニシリン単独では肺炎球菌しかカバーできてないのでこれは不適です。
インフルエンザ菌にはどの抗菌薬を使う?抗菌薬選択
よってアジスロマイシンがとなるので答えは1。
ちなみに、ペニシリンアレルギーの際にグラム陽性、陰性菌に使える代替案の1つがマクロライド系です。
さらに付け加えると、マクロライド系の乱用のせいで肺炎球菌が耐性を持ってきていて、エリスロマイシンやクラリスロマイシンは効きが悪くなってますのでこの問題の選択肢がアジスロマイシンでなければ×になっていたと思います。
消去法でいかないと難しい問題だと思います。起因菌が判明していない状況で、エンピリックにマクロライド系を選択するのは一般的ではない気がするので。
以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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