ジギタリス中毒にカルシウム製剤が禁忌な理由

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循環器
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ジギタリス製剤とはジゴキシン、メチルジゴキシン、デスラノシドを指します。

強心作用が有名ですが、迷走神経刺激作用により心拍数を下げる働きがあることから心房細動における心拍数コントロール(レートコントロール)として用いられる方が主流です。

ジギタリス中毒を疑う症候としては、悪心・視覚異常・期外収縮・徐脈です。

ジギタリス中毒ではなぜカリウムが上昇することがあるのでしょうか。

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ジギタリス製剤の作用機序とカリウム

ジギタリスはNa-K ATPaseを阻害します。それによりNaが細胞外へ出て行けなくなるので細胞内Na濃度が上昇します。

すると普段は細胞外のNaを取り込み細胞内のCaを細胞外へ汲み出しているNa-Ca交換体が逆回転して、Naを汲み出してCaを取り込みます。

心筋細胞内のCa濃度が上昇し、収縮力が高まります。

 

ジギタリス中毒で高カリウムとなるのは、①でNa-K ATPaseを阻害するために細胞内へKが入っていけないためです。

ジギタリス中毒による高カリウム血症にグルコン酸Caを使わない理由

上記の説明で察している方もいると思いますが、グルコン酸Caを投与すると血中のCa濃度が上昇し、心筋に流入するCaも多くなり、ジギタリスの作用をさらに増悪させてしまうためです。

対処方法と覚えるべき薬物動態パラメータ

1stはジギタリスの投与中止。

そして高カリウム血症と徐脈に対処しなければなりません。

高カリウム血症→ポリスチレンスルホン酸Na、グルコースーインスリン療法

徐脈→アトロピン(ジギタリスによる迷走神経活性化をブロック)

 

パラメータとは各項目の数値です。ゲームで言う攻撃力20、防御力23のようなイメージです。

トーアエイヨージゴキシン錠 インタビューフォーム

循環器薬の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン2015によると、

有効血中濃度:0.5〜1.5ng/ml

半減期   :30〜40時間

分布容積  :7L/kg

腎排泄率  :70%

 

分布容積は大きく、60kgの人で420L。ヒトの血液量は8%とすると4.8Lなので、血液ではなく細胞の中に移行していると思われます。そのため透析では抜けません。

 

腎排泄型なので、脱水や腎機能障害でジギタリス中毒になりやすいことに注意!

そのほか、低カリウム血症だとKが足りないのでNa-K ATPaseの回転がうまくいきません。そのためジギタリスに阻害されているのと同じような効果が生まれ、相乗効果となってジギタリス中毒をきたしやすいので補正します!

医師&薬剤師国家試験問題で症例をチェック!

第111回医師国家試験 G63より引用

84歳の女性。失神と眼前暗黒感とを主訴に来院した。

現病歴:1週間前から時々気が遠くなるようなふらつきを自覚していたが、本日、朝食前に突然眼前暗黒感を自覚し意識が消失した。意識はすぐに回復したが、心配になり長女に付き添われて救急外来を受診した。

既往歴:60歳ごろから高血圧症と脂質異常症。75歳ごろから骨粗鬆症と逆流性食道炎。80歳ごろから心不全と心房細動で内服治療中。アンジオテンシンII受容体拮抗薬、スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉、ビスホスホネート製剤、プロトンポンプ阻害薬およびジゴキシンを処方されている。

生活歴:ADLは自立している。長女夫婦と3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。

家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。

現 症:意識は清明。身長150cm、体重42kg。体温35.8℃。脈拍36/分、不整。血圧152/70mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心尖部を最強点とするII/VIの汎収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(−)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球352万、Hb 11.8g/dL、Ht 36%、白血球5,800、血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.9g/dL、AST 28U/L、ALT 32U/L、ALP 164U/L(基準115〜359)、CK 45U/L(基準30〜140)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.4mg/dL、血糖110mg/dL、HbA1c 5.7%(基準4.6〜6.2)、Na 133mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 0.3mg/dL。

まず行うべきなのはどれか。

a 脳波
b 心電図
c 頭部MRI
d 胸部造影CT
e ヘッドアップテイルト試験

正解・解説はこちら
正解はbです。

失神と眼前暗黒感、脈拍36/分の徐脈、クレアチニン1.4mg/dLの腎機能障害があります。これらを組み合わせると、腎機能障害→ジゴキシン排泄低下→ジゴキシン中毒→徐脈→失神・眼前暗黒感というストーリーが考えられます。

そのため心電図検査にて期外収縮やST降下などジゴキシン中毒に特徴的な所見を探っていくことになります。


 

第98回薬剤師国家試験 問268より引用

80歳女性。体重65kg。うっ血性心不全、高血圧症、慢性腎不全と診断され、以下の薬剤を服用していた。アレルギー歴、肝機能障害、副作用歴なし。
昨日、食欲低下と不整脈等の体調変化が認められ、救命救急センターに運ばれた。

ジゴキシン錠0.25mg
フロセミド錠40mg
スピロノラクトン錠25mg
デノパミン錠5mg
バルサルタン錠40mg

診察した医師はジギタリス中毒を疑い、薬剤師に情報提供を求めた。
ジギタリス中毒に関する内容として、誤っているのはどれか。
1つ選べ。

1 消化器症状として食欲不振、悪心がある。
2 視覚異常として黄視・複視がある。
3 血清中ジゴキシン濃度(トラフ値)が2ng/mLを超えると、中毒症状の発現頻度が高くなる。
4 肝機能障害のある患者では中毒症状を起こしやすい。
5 一般に、ジゴキシン除去を目的とした血液透析は無効である。

正解・解説はこちら
正解は4です。

ジゴキシン中毒の症状として、悪心や視覚異常があります。有効血中濃度の1.5ng/mLを超えると中毒症状が出やすくなります。分布容積が大きく透析では抜けないのでした。

腎排泄型なので4が誤りです。


第92回薬剤師国家試験 問190より引用

66歳男性、軽度の心不全症状のため、ジゴキシン0.25 mg/日及びフロセミド40 mg/日を経口投与されていたが、労作時呼吸困難が強くなり来院した。心電図で、心房細動、ST波の盆状降下及び多源性心室性期外収縮を認め、ジギタリス中毒と診断された。また高度の低K+血症も認められた。直ちにジゴキシン投与が中止された。
続いて行う処置として、採用可能な正しいものの組合せはどれか。

a フロセミドの増量
b アンギオテンシン変換酵素阻害薬の投与
c アドレナリンβ受容体刺激薬の投与
d フロセミドからスピロノラクトンヘの変更

1 (a、b)  2 (a、c)  3 (b、c)  4 (b、d)  5 (c、d)

正解・解説はこちら
正解は4です。

本症例ではフロセミドにより高度な低カリウム血症を認めており、それによりジゴキシン中毒が誘発されたものと考えられます。記載はありませんが、強制的に徐脈となったため労作時呼吸困難が生じているものと思われます。

カリウムを下げないようにするには、カリウム保持性利尿薬のスピロノラクトンへの変更や、間接的にアルドステロン作用を阻害してカリウムを保持するACE阻害薬の投与が当てはまります。

逆に、フロセミドを増量したり、β刺激薬を使うと余計にカリウムが下がりますので病態が悪化します。


以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも参考になれば幸いです。

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