医師国家試験でよく出題される閉塞性肥大型心筋症。治療薬が病態を悪化させるのか改善させるのか混乱しますよね。悪化する薬剤を選ぶと禁忌になることも…
しっかりおさえて禁忌を回避しましょう。
閉塞性肥大型心筋症の病態
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/shinzougeka/heartteam/posts/news27.htmlより引用
閉塞性肥大型心筋症は心筋の肥大によって血液の通り道である流出路が狭くなり、心拍出量が低下する病態です。
流出路を狭くさせなければ改善します。
流出路を広げるためには、水風船をふくらませることをイメージしてください。
入れる水の量を増やし、風船がしぼまないようにし、出口を閉じますよね?
これがそのまま前負荷↑、心収縮力↓、後負荷↑に該当します。
前負荷 | 心収縮力 | 後負荷 | |
---|---|---|---|
悪化 | 硝酸薬、利尿薬 ACE阻害薬・ARB |
β刺激薬、ジギタリス | Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系) ACE阻害薬・ARB |
改善 | 輸液 | β遮断薬、Ca拮抗薬(非ジヒドロピリジン系)、Ⅰa群抗不整脈薬 | α刺激薬 |
こうしてみると、循環器疾患なのに血管拡張薬も利尿薬もACE阻害薬・ARBも使えないというのは意外なところですね。
また、単純にCa拮抗薬とだけ覚えていると、禁忌を踏んでしまう可能性があることがおわかりでしょうか。
Ca拮抗薬は大きくジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に分類されます。
ジヒドロピリジン系は語尾が〜ジピンで、主に血管に作用するため降圧薬として用いられます。
非ジヒドロピリジン系は主に心臓に作用するため抗不整脈薬として用いられます(ベラパミル、ジルチアゼム)。
非ジヒドロピリジン系薬剤は心筋収縮力を抑制する作用(陰性変力作用)があるため、病態を改善する方向に働きます。
Ⅰa群抗不整脈薬のジソピラミドやシベンゾリンも同様の理由です。
心筋症診療ガイドライン2018より引用
閉塞があるのかないのかで治療薬が変わってきます。
降圧薬を学ぶ際には、ぜひ前負荷、心収縮力、後負荷のどこに作用するのか意識してみてください。
国家試験問題で理解度をチェック
21歳の女性。運動時に気が遠くなる感じがあることを主訴に来院した。3か月前から同様の症状に気付いていた。脈拍68/分、整。血圧112/68mmHg。心尖部にIV音を、胸骨左縁第4肋間を中心に収縮期雑音を聴取する。心エコー図(A、B)を別に示す。治療薬として適切なのはどれか。
a 利尿薬b 硝酸薬c β遮断薬d ジギタリスe アスピリン
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも参考になれば幸いです。
コメント