妊婦さんの処方箋を見たときに、鎮痛剤が処方されていると少し警戒してしまいます。
なかでもアスピリンに関して記事にしてみました。
アスピリンは用量で主となる作用が異なる
100mg程度の低用量では、主に血小板のCOXを阻害し、血小板凝集作用のあるTXA2の産生を抑制することで抗血小板作用を発揮します。
一方、330mg以上の高用量では、血管内皮細胞のCOXまで阻害してしまい、血小板凝集抑制作用のあるPGI2の産生を抑制してしまうため血小板凝集抑制作用が減弱します。COX−2を阻害しPGの産生を抑制するため鎮痛作用を発揮します。
これがアスピリンジレンマです。
NSAIDsを使うと何が不都合なのか?
COXにより産生されるPGには血管拡張作用があります。これにより胎児の動脈弓と肺動脈をつないでいる動脈管が開いています。
妊娠末期にNSAIDsを投与するとPGが低下することで動脈管が閉鎖し、肺高血圧症を惹起してしまう恐れがあります。
妊娠末期では胎児が大きくなり、腰痛が出やすくなるため鎮痛剤を必要とする方が多いのでより注意が必要です。
ではどんな人にアスピリンが処方されるのか?
抗リン脂質抗体症候群の方に処方されます。
抗リン脂質抗体症候群は、カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなどのリン脂質に対する抗体が産生されてしまい、動脈血栓や静脈血栓ができやすくなる疾患群です。
胎盤の血管にも血栓ができることで不育症や習慣流産の原因となりますので、動脈血栓に対してアスピリン、静脈血栓に対してヘパリンが処方されます。(非妊婦ならワルファリンも)
低用量のアスピリンであれば胎児への影響も少ないのですが、動脈管閉鎖の可能性もゼロではないため、念のため妊娠末期に入る手前の妊娠28週までで中止となります。
妊娠による体の変化と薬物動態
第103回薬剤師国家試験 問69より引用
妊娠に伴い低下するのはどれか。1つ選べ。
1.胃内pH
2.糸球体濾過速度
3.心拍出量
4.肝血流量
5.血清アルブミン濃度
胃内pHが上昇するということは、酸性薬物であるアスピリンはイオン型となり細胞膜の通過性が低下しますので消化性潰瘍の副作用は起こりにくくなると考えられます。
アルブミンに結合するアスピリンとワルファリンは競合して遊離体のワルファリンが増えます。さらに妊娠によってアルブミン濃度が低下しているのでより遊離体が増え、作用が増強することが考えられます。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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