妊婦・胎児に影響のある薬剤〜催奇形性と胎児毒性の違い〜

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医療従事者に必須の知識

妊婦や胎児に影響があるために処方できない薬剤についてまとめてみました。

私は産婦人科の門前薬局で働いていたこともあるので頭に叩き込んだ記憶があります。解説も加えてみました。使用にあたっては最新の情報をご参照ください。

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胎児に影響のある薬剤


産婦人科診療ガイドライン2014 より引用

これは妊娠初期に服用すると奇形や毒性を引き起こす可能性のある薬剤の一覧ですが、みなさんはこれをどう読んでいきますか?

「うわっ…多すぎ。覚えられない」と感じるのではないかと思います。

これらの薬を1つ1つベターっと覚えていくのは茨の道です。なのでこれらの薬を作用機序で分類してみると…

◆抗癌剤
サリドマイド
シクロホスファミド
メトトレキサート

 

◆抗てんかん薬
カルバマゼピン
トリメタジオン
バルプロ酸ナトリウム
フェニトイン
フェノバルビタール

 

◆ホルモン関連薬
ダナゾール(テストステロン誘導体)
チアマゾール(甲状腺ホルモン産生阻害)

 

◆脂溶性ビタミン関連薬
エトレチナート
ビタミンA
ワルファリンカリウム(ビタミンK拮抗)

 

◆PGE1製剤
ミソプロストール

 

かなりすっきりしたと思います。もっとざっくりですが、これらの薬の共通点をひとつ。

脂溶性が高いという性質があります。

脂溶性が高いホルモンやビタミンはもちろんのこと、脳に作用するということは脂溶性が高いことを意味します。これらは胎盤さえも通過してしまうため胎児にも作用を及ぼします。

抗癌剤は代謝の早い細胞にダメージを与えやすい薬剤ですし、PGE1製剤は子宮収縮作用があるため妊婦には用いません。

以上のように、なるべく暗記でなく共通点から連想できるようにすれば忘れにくく、思い出しやすい記憶になります。

催奇形性と胎児毒性の違いとは

催奇形性:妊娠4〜15週に起こる、形態的な異常

胎児毒性:妊娠16週以降に起こる、主に機能的な異常

 

妊娠週数

妊娠4週まで

ALL or NONEの法則:この時期はまだ器官(臓器)を形成していないため、薬剤の影響を受けたとしても完全に修復してしまうか、修復できずに着床できず流産となる全か無かのどちらかになります。

ただし、脂溶性が高いなどで体内に留まりやすい性質の薬剤は長期間作用し、次の絶対過敏期にまで影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。

例:エトレチナート、リバビリン

 

妊娠4〜16週

絶対過敏期(4〜7週):心臓や中枢神経などの主要な臓器が作られる時期のため影響が大きい時期です。

相対過敏期(8〜15週):外性器や口蓋が形成される時期。

例:アミノグリコシド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系抗菌薬、ワルファリン、エトレチナート、リバビリン

 

妊娠16週以降

胎児毒性:胎児の臓器の機能が未熟なため悪影響を受けやすい時期

例:ワルファリン、NSAIDs、経口血糖降下薬、ACE阻害薬、ARB

 

国家試験問題で理解度をチェック

第110回医師国家試験 D20より引用

23歳の初妊婦。発熱を主訴に来院した。現在、妊娠15週。3日前から下腹部の違和感と排尿時痛とを認め、昨日から38.4℃の発熱が出現した。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。体温38.8℃。脈拍100/分、整。血圧118/68mmHg。呼吸数20/分。右肋骨脊柱角に叩打痛を認める。尿Gram染色でGram陰性桿菌を認めた。
投与すべき抗菌薬はどれか。

a.セフェム系
b.マクロライド系
c.ニューキノロン系
d.テトラサイクリン系
e.アミノグリコシド系

正解・解説はこちら

答えはa。

妊娠15週の女性。発熱・叩打痛から腎盂腎炎が疑われます。グラム染色の結果から大腸菌が起因菌と考えられます。

大腸菌にスペクトルを持ち推奨されるのはニューキノロン系とセフェム系ですが、妊娠15週とのことなので関節軟骨の形成異常をきたしうるニューキノロン系は不適です。

よってセフェム系のa。


第96回薬剤師国家試験 問231より引用

妊婦または妊娠を希望する患者に対する服薬指導に関する記述のうち適切なものの組合せはどれか。

a 妊娠後期は絶対過敏期とよばれ薬物による胎児の奇形の発生率が最も高い時期であることを説明した。

b 服薬の危険性とともに自然奇形発生率についても説明した。

c 高血圧症の妊婦に対してエナラプリルマレイン酸塩は使用できる薬であると説明した。

d 甲状腺機能低下症の妊婦に対してレボチロキシンナトリウムは継続して使用できる薬であると説明した。

e パートナーが妊娠する可能性のある男性患者にリバビリンを服用する場合は信頼できる避妊法を用いるように説明した。

1(a、b、c) 2(a、b、e) 3(a、c、d) 4(b、d、e) 5(c、d、e)

正解・解説はこちら

答えは4(b、d、e)。

a.妊娠後期とは妊娠28〜39週のことなので、4〜7週の絶対過敏期には該当しません。

b.正解。自然奇形発生率は約3%です。薬剤による奇形発生率は1%程度だということも合わせて伝えて、服薬に対する不安に対処しておくことが重要です。

c.エナラプリルはACE阻害薬なので禁忌です。

d.正解。レボチロキシンは甲状腺ホルモン剤です。甲状腺ホルモンはもともと人体にあるものなので安全に使用できます。

e.正解。リバビリンは精液中へ移行するため、少なくとも半年の避妊が必要です。

第102回薬剤師国家試験 問84より引用

妊婦への投与が禁忌である医薬品はどれか。1つ選べ。

 アセトアミノフェン
 インスリン
 炭酸リチウム
 プレドニゾロン
 ヘパリンナトリウム

正解・解説はこちら
正解は3です。

1 最も安全性が確立されている解熱鎮痛剤ですのでOK

2 インスリンも元々母体にあるものですのでOK

3 禁忌です。エプスタイン奇形という先天性心疾患のリスクが上昇します。

4 ステロイドも元々母体にあるものなのでOK

5 ヘパリンはOKですが、脂溶性の高いワルファリンは禁忌です。


以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考になれば嬉しいです。

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