オピオイド鎮痛薬について勉強した際に、WHO方式のがん性疼痛の薬物治療が出てきたと思います。その中で強オピオイドと弱オピオイドという単語が登場してきます。これらの違いって何なのか、すぐに思い浮かびますか?
私はパッと出てこなかったのでまとめてみました。
ちなみに、麻薬は「麻薬及び向精神薬取締法」で決められた法律用語ですので、薬理学的には正しくありません。以下もオピオイド鎮痛薬で統一します。
WHO方式三段階除痛ラダー
三段階除痛ラダーは以下の図で示されるものです。
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)より引用
アセトアミノフェン
・抗てんかん薬
・リドカインなどの抗不整脈薬
・ケタミンなどのNMDA受容体拮抗薬
・ベンゾジアゼピン系
・ビスホスホネート系
・ステロイド
・バクロフェンなどの中枢性筋弛緩薬
WHO方式は1980年代ごろに設定されたものです。
弱オピオイドの定義は「鎮痛効果に上限があり、それ以上増やしても鎮痛効果が上がらない投与量がある(天井効果)オピオイド」とされています。
つまり、弱オピオイドは天井効果があるものを指します。
近年では低用量のオキシコドン(20mg以下)・モルヒネ(30mg以下)も弱オピオイドに含めますが、国家試験レベルではそこまでは考えなくていいでしょう。
弱オピオイド・強オピオイドのゴロ合わせ
弱オピオイドを覚えてしまえば他は強オピオイドです。
強オピオイド
モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、ヒドロモルフォン、タペンタドール、メサドン
特記すべきこととして、メサドンは「他の強オピオイド鎮痛薬の投与では十分な鎮痛効果が得られない患者」に使用するよう定められています。最終兵器の位置づけです。
弱オピオイド
一覧表で確認するとわかりやすいかも
一覧にまとめてみました。受容体は3種類ありますが、μ受容体に作用すると一番鎮痛効果が高いです。
オピオイド | μ受容体 | δ受容体 | κ受容体 |
---|---|---|---|
モルヒネ | +++ | + | |
オキシコドン | +++ | ||
フェンタニル | +++ | ||
ペンタゾシン(部分作動薬)※ | ++ | + | ++ |
ブプレノルフィン(部分作動薬) | +++ | ++ | +++ |
コデイン | + | ||
トラマドール | + |
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)より改変
結局のところ、
とまとめることができます。
※ペンタゾシンは依存・乱用の問題もあり、現在ではがん性疼痛には用いられなくなっているためWHO方式三段階除痛ラダーには含まれていません。
理解度を薬剤師国家試験でチェック!
第98回薬剤師国家試験 問282より引用
65歳男性。体重53 kg。疼痛緩和治療を受けているがん患者である。モルヒネの副作用としての便秘がひどくなり、処方変更がなされた。
(従来処方)モルヒネ硫酸塩水和物徐放錠30 mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 3日分(変更処方)フェントステープ2 mg(注) 1回1枚(1日1枚)
1日1回 就寝前 3日分(全3枚)
(注:フェンタニルクエン酸塩2 mgを含む経皮吸収型製剤)
問282 (実務)
疼痛緩和治療に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。1 上記の処方変更は、オピオイドローテーションの一例である。
2 WHO方式3段階がん疼痛治療ラダーの第1段階では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)かペンタゾシンのいずれかが用いられる。
3 フェントステープへの切り替えの際は、レスキュードーズを考慮する必要がある。
4 フェントステープ使用時には、NSAIDsなどの鎮痛補助剤の併用は避けるべきである。
第103回薬剤師国家試験 問 302より引用
第101回薬剤師国家試験 問252より引用
45歳女性。卵巣がん。がん性疼痛に対して以下の薬剤を使用してきたが、疼痛が増強してきたので追加処方を検討することにした。
(処方)
ロキソプロフェンNa錠60mg
1回1錠(1日3錠)
1日3回朝昼夕食後14日分ロキソプロフェンNa錠に追加する薬剤として適切なのはどれか。2 つ選べ。
1 コデインリン酸塩散10%
2 セレコキシブ錠
3 モルヒネ硫酸塩水和物徐放錠
4 メサドン塩酸塩錠
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでもお力になれれば嬉しいです。
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