眠気のメカニズムから見たカフェインの作用機序とノウリアストの作用機序

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作用機序

仕事中や勉強中に眠気に襲われることがありますが、一体どのように眠気がきているのか、調べてみました。

薬剤師国家試験の脳の構造とも関与してきますので、それぞれの部位がどんな働きがあるのかもあわせておさえておきましょう。

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眠気のメカニズム

プロスタグランジンD2(PGD2)

アデノシン産生亢進

睡眠中枢を活性化しGABA放出

覚醒中枢を抑制

脳のオリゴデンドロサイト(ニューロンの軸索を覆っているミエリン髄鞘を形成)から産生されたPGD2は、脳脊髄液に分泌され、前脳基底部のクモ膜に作用してアデノシン産生を増加させます。

アデノシンは睡眠中枢のアデノシンA2A受容体を介してGABAニューロンを活性化します。抑制性の神経伝達物質であるGABAは覚醒中枢からのヒスタミン放出を抑制して、眠気が起こります。

ちなみに、外傷などで怪我したときにアラキドン酸からプロスタグランジンが産生されますが、風邪などの時に薬を飲んでいないのにボーッとして眠気を感じることがあるのはPGD2によるものだそうです。

 

睡眠系

睡眠状態に移行する時は、睡眠中枢である腹外側視索前野のGABA作動性神経からGABAが放出され、覚醒中枢である結節乳頭核のヒスタミン作動性神経系の働きを抑制して、覚醒状態を睡眠状態へとスイッチします。
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GABA受容体を刺激するベンゾジアゼピン系は覚醒系を抑制させて眠りやすくしています。

覚醒系

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脳幹網様体賦活系は脳の覚醒状態を維持する系。

覚醒状態では橋に存在する縫線核(セロトニン神経系)と青班核(ノルアドレナリン神経系)からの覚醒刺激が覚醒中枢(結節乳頭核)のヒスタミン作動性神経を活性化し、ヒスタミンを分泌して覚醒を維持します。

前庭器官からヒスタミンやアセチルコリンが延髄に入力されています。

前庭器官では平衡や角加速度を感知するため、頭がカクンとするような寝落ちする時の動きで大脳へ刺激を送るため、覚醒に働きます。

ちなみに、中枢への移行性がよい第1世代のヒスタミンH1受容体拮抗薬は、覚醒作用のあるヒスタミンと拮抗して眠気を生じさせます。また、前庭器官からのヒスタミン入力に拮抗して乗り物酔いにも効きます。

以上のことを考慮すると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬オレキシン受容体拮抗薬を服用すると、覚醒中枢は抑制されます。

これらの薬を服用している患者さんに、新しく抗ヒスタミン薬が追加されると覚醒系をほとんど抑制してしまいます。

管理薬剤師.comより引用

ベンゾジアゼピン系:GABA⬆︎

オレキシン受容体拮抗薬:オレキシン⬇︎

抗ヒスタミン薬;ヒスタミン⬇︎

 

カフェインの作用機序

カフェインはアデノシンと同じくプリン骨格を持っています。

そのため、アデノシンがアデノシンA2A受容体へ結合するのを阻害してGABAの遊離を抑制し、眠気を抑えます。

すでに蓄積してしまったアデノシンを分解する作用はないので、カフェインが切れると眠気に襲われます。中枢刺激作用もあるので栄養ドリンクを飲むと疲れや眠気を感じにくくなりますが、効果が切れると途端に眠く寝るアレです。

仮眠前にコーヒーを飲んでおくと、仮眠中にアデノシンが分解され、新たにアデノシン受容体に作用するのをブロックできるため頭がスッキリします。

喫煙でCYP1A2が誘導されるのは有名です。カフェインはCYP1A2によって代謝されるため、喫煙者は非喫煙者に比べカフェインが効きにくくなっています。

 

イストラデフェリン(ノウリアスト)の作用機序

カフェインと似たような作用機序にイストラデフェリン(商品名ノウリアスト)があります。イストラデフェリンもプリン骨格を持ちます。

ノウリアスト錠 インタビューフォームより引用

アデノシンA2A受容体は、大脳基底核の線条体ー淡蒼球にまたがって存在する中型有棘ニューロン(GABAニューロン)に特異的に発現しています。

線条体や淡蒼球は無意識の運動(不随意)や筋肉の緊張に関与しており、体を動かす際に関係のない筋肉を弛緩させたりといった調節をしています。

 

ノウリアスト錠 インタビューフォームより引用

この中型有棘ニューロン(MSN)はドパミンやアデノシンによって活性を調節されています。

ドパミンが結合するとMSNが抑制され、GABA遊離が抑制され動きやすくなります。
アデノシンが結合するとMSNが興奮し、GABA遊離が促進され動きにくくなります。

パーキンソン病ではドパミン神経の脱落によりドパミンが不足しているので、相対的にアデノシンの作用が勝っています。

優位になったアデノシンの作用により中型有棘ニューロンが興奮し、淡蒼球へGABAが放出されます。錐体外路の伝達がGABAにより抑制されて運動症状(動きにくさなど)が出現します。

イストラデフェリンでA2A受容体を阻害すればアデノシンによるGABA遊離を抑制でき、運動症状を改善できます。

相対的な作用のバランスを改善する作用機序のため、レボドパと併用して、wearing-off時の症状改善に用いられます。

上述の通り、アデノシン受容体を遮断するため、カフェイン様の作用を発揮します。イストラデフェリンの副作用として、不眠は1〜5%出現するようです。わりと高いですね。

参考文献

www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/230124_1169016F1020_1_004_1F

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