ステロイド糖尿病の早期発見には空腹時と食後血糖のどちらをみるか

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作用機序

ステロイド糖尿病では空腹時と食後高血糖のどちらが出やすいのでしょうか?

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記事を書いたきっかけ

次の問題は正答率は10%台の難問なんですが、学びが多い問題だと思いますので紹介します。

医師国家試験 110I13
入院中の患者に対して副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロン25mg/日を4〜6週間使用)を行うことになった。
ステロイド糖尿病の発症を効率的に発見するため繰り返し行うべき検査はどれか。
 HbA1c
 早朝空腹時血糖
 早朝空腹時尿糖
 昼食後2時間血糖
 75g経口ブドウ糖負荷試験

答えはdです。

この問題文の背景にある知識を解説していきます。

 

ステロイドによる副腎機能低下

ヒトは1日にプレドニゾロン(PSL)換算で約3〜4mgのコルチゾール(ステロイド)を副腎から分泌していると言われています。

元々の分泌量に加え、体の外からステロイドが追加されるため過量となります。そのためネガティブ・フィードバックにより視床下部と下垂体からそれぞれCRHとACTH分泌を低下させます。その結果副腎が萎縮し、コルチゾール分泌が低下します(副腎機能低下)。

だいたい3週間以上の服用で起こるとされています。

リンデロン錠®️ インタビューフォームより引用

ステロイドは上の表のように、作用時間で分類されています。ステロイド薬は脂溶性の高いステロイド骨格を持つため、組織への留まりやすさと作用の強さが比例するためです。

プレドニゾロンの半減期は経口では18〜36時間です。

一番右端のHPA抑制量というのは、長期投与で視床下部ー下垂体ー副腎の抑制する投与量が記載されています。

問題に出ていたプレドニゾロンは7.5mg/dayでHPA系を抑制してしまうのですね。

ちなみに、プレドニゾロンの投与量はだいたい

少量 :0.3㎎/㎏/day
中等量:0.5㎎/㎏/day
大量 :1.0㎎/㎏/day

となっています。

知識を入れた上でもう一度

ここでもう一度問題に戻ってみましょう。

医師国家試験 110I13
入院中の患者に対して副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロン25mg/日を4〜6週間使用)を行うことになった。
ステロイド糖尿病の発症を効率的に発見するため繰り返し行うべき検査はどれか。
 HbA1c
 早朝空腹時血糖
 早朝空腹時尿糖
 昼食後2時間血糖
 75g経口ブドウ糖負荷試験

ステロイドの投与期間は4〜6週間なので長期投与ということがわかります。

問題文のプレドニゾロン投与量は25mg/dayの中等量なので、とっくに副腎機能を低下させる量を超えていることがわかりますね。自前のステロイド分泌はなくなっているわけです。そうするとプレドニゾロンの効果が切れると血糖値は低下しやすくなります。

ステロイドは不眠などの副作用を避けるためにも、朝に分泌されるという生体のサーカディアンリズムに則って朝食後に処方されます。

そこから数時間するとステロイドによりインスリン抵抗性と糖新生が亢進し、食後血糖が上昇していきます。

プレドニゾロンは半減期が長いため昼から朝方近くまで高血糖の影響が続きますが、その効果が切れる朝方に低血糖気味になります。

以上のことから、朝方に測定する血糖や尿糖はステロイド糖尿病を発見するのに妥当ではありません。

HbA1cは過去数ヶ月の平均血糖です。高血糖と低血糖を呈しているステロイド糖尿病では平均はあまり高くなりにくいので不適です。

75gOGTTはステロイド糖尿病の可能性がある人に繰り返すだけで有害です。禁忌に近い選択肢だと思います。

ステロイド糖尿病の血糖値推移

山本 剛史 薬剤性高血糖 昭和学士会誌 2015;75-4:426-431より引用 

朝方は低血糖気味になるため、薬は低血糖をきたしにくいDPP-4阻害薬が使われることが多いです。


以上です。

ステロイドは多くの診療科で用いる薬剤ですので、ポリクリの際にいろいろと経験してみてください。

少しでも参考になれば幸いです。

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