医療従事者に必須の知識 同種同効薬の違い

プリンペラン®とナウゼリン®の違いと使い分け 制吐薬(吐き気止め)の作用機序

2016年11月22日

よく処方されるプリンペラン®とナウゼリン®ですが、その違いについてなかなかわからなかったので調べてみました。

まずは嘔吐の生理的メカニズムを一緒に復習していきましょう。



嘔吐の病態生理と各制吐薬のメカニズム

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「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2011」より引用

嘔吐は延髄に存在する嘔吐中枢が刺激されることで起こります。

その経路は以下の4つに分類されるようです。

①大脳皮質からの経路

脳血管の病変(梗塞や出血)による脳浮腫や、脳腫瘍による頭蓋内圧亢進などの物理的要因や、不安などの精神的要因が嘔吐中枢を刺激します。

炎症による浮腫を改善するステロイドや、不安を軽減する抗不安薬が有効となります。

②化学受容器引金帯からの経路

延髄の第四脳室底に存在する化学受容器引金帯(chemoreceptor trigger zone:CTZ)は同じ延髄に存在しますが、血液脳関門がなく様々な催吐性の刺激を受け、嘔吐中枢へと伝達します。

オピオイド服用による嘔気などに該当します。ドパミンD2受容体やセロトニン5-HT3受容体、ニューロキニンNK1受容体が存在するためそれらの受容体拮抗薬が用いられます。

 

③前庭器からの経路

前庭では体の動きや内耳障害により刺激され、ムスカリン性ACh受容体やヒスタミンH1受容体が関与したニューロンにより、嘔吐中枢を直接もしくはCTZを介して伝達します。

中枢への移行性が良い第一世代の抗ヒスタミン薬が用いられます。第一世代は抗コリン作用も持っているため、乗り物酔いの予防や改善に適しています。

 

④消化管からの経路

咽頭、心臓、腹膜など種々の臓器において機械的刺激により自律神経を介して嘔吐中枢へ伝達します。ドパミン刺激により消化管運動が抑制され、胃内容物が停滞し、消化管の伸展・機械的刺激が起こり嘔吐刺激が伝達されます。

D2遮断薬で末梢でD2受容体を遮断することでアセチルコリンが遊離され消化管運動が亢進します。化学療法などで消化管粘膜障害が起こると、腸クロム親和性細胞からセロトニンが放出され自律神経を介して刺激が伝達されます。

状況から判断して使う

・動くと悪化したり、めまいを伴うもの→前庭神経の刺激→抗ヒスタミン薬

・持続的な嘔気やオピオイド服用後に増悪→CTZの刺激が原因→中枢性D2遮断薬

・食後に増悪したり、便秘を伴うもの→消化管蠕動の低下→消化管運動亢進薬(末梢性D2遮断薬)

・上記の原因が複合→複数の受容体の刺激→多受容体作動薬(MARTA)もしくは複数の制吐薬の併用

プリンペランとナウゼリンは末梢性D2遮断薬にあたり、消化管蠕動が低下した場合の嘔吐に効果があります。

ちなみに中枢性D2遮断薬にはプロクロルペラジンやハロペリドールがあります。

プリンペラン®とナウゼリン®の違い

2剤の違いは脳への移行性の差にあります。

プリンペラン移行性が高いため上記の②CTZを介した中枢性、④消化管由来の嘔吐、両方へ作用します。
ナウゼリン移行性が低いため④消化管由来の嘔吐へ主に作用します。

 

また、プリンペランはD2受容体遮断作用に加えて、セロトニン5-HT3受容体拮抗作用、5-HT4受容体刺激作用も併せ持ち、胃の運動亢進作用が高いため、バリウム検査の時にも用いられます。

プリンペランは中枢へ移行しやすいため錐体外路症状の副作用頻度が高くなっています。

プリンペラン®の効能

次の場合における消化器機能異常(悪心・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感)//胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆のう・胆道疾患、腎炎、尿毒症、乳幼児嘔吐、薬剤(制癌剤・抗生物質・抗結核剤・麻酔剤)投与時、胃内・気管内挿管時、放射線照射時、開腹術後。
X線検査時のバリウムの通過促進。

整形外科においてトラムセットが処方されますが、オピオイドであるトラマドールがμ受容体を刺激してドパミン遊離を促し、そのドパミンがドパミンD2受容体を介して嘔吐中枢を刺激するため、嘔気が出現します。

その予防としてプリンペランが併用されます。中枢への移行性が悪いナウゼリンではその予防効果が薄いようです。

 

ナウゼリン®の効能

次の疾患および薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気)//慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時

効能を見ると、ナウゼリンにはレボドパ投与時の嘔気への適応があります。

レボドパと言えばパーキンソン病治療薬ですが、その病態は脳内ドパミン量の低下が関与しており、そこにドパミンD2遮断のナウゼリンを投与すると病態が悪化しそうに感じます。

しかしナウゼリンは脳への移行性が悪く、パーキンソン病の重要な部位である黒質線条体へ到達しにくいためレボドパによる消化管運動低下を改善し、レボドパによる嘔吐の治療薬となりえているのでしょう。

 

妊娠と授乳との関連

ナウゼリンはn -オクタノール/pH7.4 緩衝溶液の分配係数が3.2と脂溶性が高いため、動物実験においてですが胎盤透過性の高さが懸念され、禁忌にも記載があります。

<脂溶性や水溶性の判断については>
肝代謝型と腎排泄型薬剤の判断・指標

妊婦にはナウゼリンを避け、プリンペランにしておくのが無難ですね。

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一方、産後に授乳する際には、中枢にさえ移行しやすいプリンペランは母乳にも移行しやすいため、ナウゼリンにしておく方が安心です。

 

錐体外路症状

プリンペランは中枢移行性が高いために黒質線条体のドパミンにも拮抗してしまい、錐体外路症状の副作用出現頻度がナウゼリンに比べ高くなっています。

トラムセット服用開始から一週間程度でプリンペランの併用を中止するのは、ドパミン濃度に体が慣れてトラムセットによる嘔気が収まってくることと、プリンペランによる錐体外路症状の発現を予防するためのようです。

<効率の良い勉強法については>
効率の良い勉強法

参考文献

・がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2011
・各種インタビューフォーム



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医学部へ学士編入した薬剤師です。医学や薬学について書いています。ご質問やご指摘があればお気軽にどうぞ。