β遮断薬中毒にグルカゴンを用いる理由・作用機序

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作用機序

β遮断薬の中毒になぜグルカゴンが有効なのか、その理由をご存知でしょうか?

主に心臓や気管支平滑筋などに作用するβ遮断薬による中毒症状と、血糖値を上昇させるホルモンであるグルカゴンはどのように関係してくるのでしょうか?

 

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β遮断薬中毒の症状

β遮断薬中毒は、循環作動薬の中毒の中では頻度は少ないものの、その対応には知識があるのとないのとでは差が出てくるので知っておくにこしたことはありません。

β遮断薬中毒の症状は、副作用の分類としては薬効の過剰発現に分類されます。

すなわちβ1遮断作用とβ2遮断作用です。

・β1遮断作用→心機能抑制や陰性変時作用→心不全増悪・徐脈

・β2遮断作用→(気管支平滑筋弛緩・インスリン分泌)抑制→気管支喘息増悪、糖尿病増悪

β遮断薬中毒の30~40%は無症状ですが、死亡率は26%と高いので注意が必要です。

徐脈をアドレナリンで改善しようとしても、β1受容体は既にブロックされているため効きづらい状態です。

そんな時にはグルカゴンを用います。

グルカゴンの作用機序

グルカゴンG注ノボ注射用1mg より引用

これらの作用はGタンパク質を介しているので、前提知識としてGタンパク質のシグナル伝達を理解しておく必要があります。

Gs刺激→アデニル酸シクラーゼ活性化→cAMP上昇→PKA活性化→様々なタンパク活性化

様々なタンパクとしては、次の2種類です。

①グリコーゲンホスホリラーゼキナーゼ活性化→肝臓での糖新生⬆︎

②Na/Kポンプ活性化→電位依存性Caチャネル開口→Ca流出=細胞内Ca濃度低下→インスリン分泌⬇︎・平滑筋弛緩

β遮断薬中毒にグルカゴンが効く理由

β遮断薬では、β受容体→Gsタンパクを介したシグナル伝達をブロックするため、PKAが活性化されず上述のような症状が出現します。β受容体が遮断されているのでアドレナリンも効きづらいです。

そこで、グルカゴン投与によってβ受容体を介さずにPKAを活性化させることで中毒症状を改善します。

これとは少し異なりますが、アナフィラキシーショックの患者さんがβ遮断薬を服用していた場合でも、アドレナリンが効きません。

代わりにグルカゴンを投与してcAMPを上げることでヒスタミンの放出を抑制・気管支拡張などの作用を発揮してくれます。

消化器でも活躍!

上部消化管内視鏡の前投与として消化管の蠕動運動を抑えるために抗コリン薬が用いられますが、前立腺肥大などの患者では尿閉の恐れがあるため使えません。

そのためグルカゴンが代替薬として用いられます(消化管平滑筋弛緩作用→蠕動運動抑制)。

グルカゴンは結局弱いアドレナリンのような作用を持ち合わせているのですね。

参考文献

少し高めの値段設定ではありますが、臨床の目線で書かれているのでとても読みやすく、かつわかりやすく解説してあります。

薬学部で読んだ中毒学の教科書は基礎医学にのっとった書き方であったので読みにくかったのですが、この本は薬理学的な説明と、著者の中毒学に対する愛が随所に感じられてとても「中毒学」に関心を持ちやすい一冊になっています。

一読の価値はあります!オススメ!

以上となります。お力になれれば嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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