臨床の場でよく遭遇する心房細動。その治療薬として抗不整脈薬や抗凝固薬が用いられます。その中でレートコントロールとリズムコントロールの違いについてご存知でしょうか?
まとめてみました。
心房細動とは
心房で洞房結節以外の部分から異常な電気信号が起こり、リエントリー(電気の旋回)が起こり、心房の細かい振動が起こります。
心電図
・心室の伝導に異常はないため細いQRS波
・心房の異常な興奮は房室結節が止めてくれますがあまりにも数が多いため間引いても止めきれず、RR間隔は不整、基線の細かな揺れ(f波)
治療薬
リズムコントロールとレートコントロール
心房細動は心房の異常な興奮による頻脈性の不整脈です。RR間隔が不整であり、頻脈です。
リズムコントロール:リズム(異常な電気興奮)を正常に戻す
レートコントロール:リズムは変えずに心拍(Heart rate)を落とす
リズムコントロールの薬
心房細動は心房内の異所性の電気刺激によるリエントリーが原因でした。ということは電気刺激による興奮、つまりNaチャネルを抑えてあげれば良さそうですね。
抗不整脈薬のNaチャネル遮断薬(ボーンウィリアムス分類のⅠa群、Ⅰc群)がリズムコントロールの薬として用いられます。
レートコントロール
心房細動は頻脈なので、心拍数を下げる薬剤がこれに該当します。
・ジギタリス
・Ca拮抗薬
・β遮断薬
このうち、ジギタリスとCa拮抗薬はWPW症候群に伴う心房細動では、正常の伝導を抑制して副伝導路の伝導を促進して悪化してしまうため禁忌となっています。
どっちがいいのか?
リズムコントロールとレートコントロール、結局どちらがいいのでしょうか?
海外の大規模臨床試験のAFFIRM試験、日本で行われたJ-RHYTHM試験において、レートコントロールとリズムコントロールの2群に分けて経過を追跡したデータがあります。
結果、この2群間で総死亡率や心血管イベント発生率に有意差は認められませんでした。
そのため自覚症状のない患者さんには比較的副作用の少ないレートコントロールが用いられることが多くなってきています。
国家試験問題で理解度をチェック!
第109回医師国家試験 A31より引用
78歳の男性。動悸を主訴に来院した。3日前に家の片付けを行っていたところ動悸を初めて自覚した。動悸は突然始まり、脈がバラバラに乱れている感じで持続していたが、日常生活には影響しなかったので経過をみていた。本日になっても続くため心配になって受診した。特に易疲労感、呼吸困難感およびめまいなどは自覚していない。10年前から高血圧症で加療中。家族歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長168cm、体重62kg。体温36.2℃。脈拍76/分、不整。血圧152/90mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。I音の強さが変化する。呼吸音に異常を認めない。血液所見:赤血球464万、Hb 14.0g/dL、Ht 42%、白血球6,800、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、アルブミン3.6g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 26U/L、ALT 18U/L、LD 178U/L(基準176〜353)、ALP 352U/L(基準115〜359)、γ-GTP 42U/L(基準8〜50)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L、TSH 0.8μU/mL(基準0.4〜4.0)、FT41.4ng/dL(基準0.8〜1.8)。胸部エックス線写真で心胸郭比48%、肺野に異常を認めない。心電図を別に示す。
a 経過観察
b 抗凝固薬投与
c 抗不整脈薬の静脈内投与
d カテーテルアブレーション
e 電気ショック(カルディオバージョン)
以上となります。少しでもお力になれれば嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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