糖尿病の薬は血糖を下げる効果があるため、低血糖を引き起こしやすいことは理解しやすいですが、糖尿病以外に用いる薬が低血糖を引き起こすのは知らなければわかりません。
私も学業の合間に薬剤師として働かせていただいているので、注意喚起として2つご紹介したいと思います。
低血糖を引き起こしやすい薬
レボフロキサシン
使用頻度が高い抗菌薬なのに、低血糖の副作用があまり意識されていない薬剤だと思います。
しかも、糖尿病の患者さんでは高血糖のために易感染性になっており、感染症になりやすい→抗菌薬を処方されやすい状況にあり、糖尿病薬の作用と合わせて低血糖リスクが高まりやすいです。
さらに様々な菌に効きやすいという広域スペクトルを持つことから頻用されやすい薬剤です。
SU薬と同様、膵臓のβ細胞のATP感受性Kチャネルの閉鎖作用があるため、インスリン分泌作用があり、低血糖をきたしやすいとのことです(平成23年 重篤副作用疾患別対応マニュアル 低血糖より)。
シベンゾリン
NaチャネルとともにKチャネル遮断作用があります。膵臓のβ細胞のATP感受性Kチャネルにも作用してしまい、インスリン分泌作用があるため低血糖をきたしやすいです。シベノール錠の添付文書では0.1~5%の記載があります。
これらの薬剤はいずれも腎排泄型なので、高齢者などでは排泄が遅延しやすく副作用が発現する恐れがあるので注意が必要です。
国家試験でも出題されています。
薬剤師国家試験 第100回 問334より引用
65歳男性。体重 72kg。非弁膜症性心房細動との診断で下記の処方薬を服用していた。数日前から、めまい、ふらつき、冷汗、手の震え、軽度の意識障害にて昨日入院となった。
本日病室を訪問した薬剤師は、下記の処方薬を日頃欠かさず服用していたことを付添いの家族から聴取した。また、カルテから入院時検査結果が血 清クレアチニン値は2.0mg/dL、BUN は 39mg/dL、空腹時血糖は40mg/dLであることを確認した。
シベンゾリンコハク酸塩錠 100mg 1回1錠(1日3錠)
ベラパミル塩酸塩錠 40mg 1回1錠(1日3錠)
ニコランジル錠 5mg 1回1錠(1日3錠) 1日3回 朝昼夕食後
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル 110mg 1回1カプセル(1日2カプセル)
ニフェジピン徐放錠 10mg(12時間持続) 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝夕食後担当の薬剤師は、入院時の不快症状と検査値から薬の副作用を疑い、医師に薬剤の変更を提案しようと考えた。該当する薬剤はどれか。 1つ選べ。
1 シベンゾリンコハク酸塩錠
2 ベラパミル塩酸塩錠
3 ニコランジル錠
4 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル
5 ニフェジピン徐放錠
第100回の薬剤師国家試験にも低血糖の副作用が出題されていました。
しかしこの設問、そもそも高度腎機能低下にダビガトランを投与しているところが問題なのに、その上、P糖タンパク阻害剤であるベラパミルを併用しておりダビガトランの血中濃度が上昇しやすい相互作用にも問題のあるものでした。要素が多すぎて薬学生に判断させるのは難しすぎる問題ではないでしょうか。
そもそも身長が与えられていないので肥満があるかわかりません。肥満があればクリアチニンクリアランスの推算式では腎機能が高めに出てしまいます。
しかも腎障害あるならダビガトランにこだわらずに他のDOACに変更すれば、ベラパミルとの相互作用もなくなるし一石二鳥と思います。
問われているのは低血糖をきたした薬剤はどれかというものでしたが、ひとつのものに捉われず、全体を見る癖をつけたいものです。
まとめ
こういった内容は、各専門医なら知っていることが多いのですが、専門外の先生はこのことまで把握できるかというと厳しいです。
だからこそ薬剤師の先生方がこのことを注意して処方をチェックいただけるとものすごく心強いです。
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