体質性黄疸(Gilbert症候群)とイリノテカン

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作用機序

薬学部の知識と医学部の知識が繋がるとアハ体験というか、テンションが上がります。

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薬学部の知識

イリノテカンは抗腫瘍性アルカロイドの1つで、大腸癌のレジメンであるFOLFIRI療法などに用いられている薬剤です。

トポイソメラーゼを阻害することでDNA合成期(S期)を阻害します。特徴的な副作用は下痢です。当時使ってたゴロは「イチノテカン、ゲリノテカン」です。

体内で活性化体であるSN-38へ変換され作用を発揮し、UGT1A1(UDPグルクロン酸転移酵素)によってグルクロン酸を付加されることで不活性化されます。

そのため、UGT1A1の遺伝子多型によって不活性化の度合いが異なるため副作用の程度へ影響してきます。*6や*28などが報告されています。

そのため薬剤師は治療前にUGT1A1の遺伝子多型を意識してみています。

 

医学部の知識

体質性黄疸は、赤血球が分解されてできるビリルビンの代謝過程に先天的な障害があるために起こる黄疸です。

体質性黄疸には、直接ビリルビンが上昇するタイプと、間接ビリルビンが上昇するタイプに大別されます。

【直接ビリルビンが上昇するタイプ】

Dubin-Johnson症候群

Rotor症候群

有名なゴロは「直接=DiRect」

 

【間接ビリルビンが上昇するタイプ】

・Gilbert症候群

・Crigler-Najjar症候群

 

これらの中で最も頻度が高いのはGilbert症候群で、他は稀です。Crigler-Najjar症候群のⅠ型以外は原則治療は不要です。

Gilbert症候群ではUGT1A1のグルクロン酸抱合能が70%ほど低下しているために黄疸が出現します。

 

国家試験問題で確認

第102回 薬剤師国家試験 問264-269より引用

58歳男性。手術不能の直腸がんと診断され、以下に示すレジメンに従った化学療法を施行することとなった。

266

患者の検査値を確認したところ、血中間接ビリルビン値が2.8mg/dLと高値を示すが、直接ビリルビン値は正常範囲内であった。患者と面談したところ、以前他院にて体質性黄疸と診断されたが、特に治療は行っていないことが判明した。

処方薬の副作用を予測するために、推奨すべき遺伝子診断の対象となる遺伝子はどれか。1つ選べ。

1 ALDH2
2 CYP2C19
3 CYP2D6
4 NAT2
5 UGT1A1

 

267(実務)

前問の遺伝子診断の結果、酵素活性の低下を伴う遺伝子型であることが判明した。この患者の治療上、注意すべき内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 ベバシズマブの薬効減弱
2 ベバシズマブの副作用発現
3 イリノテカンの薬効減弱
4 イリノテカンの副作用発現
5 フルオロウラシルの薬効減弱
6 フルオロウラシルの副作用発現

正解・解説はこちら
正解はそれぞれ5、4です。

これまでの知識を統合してこの症例問題を見てみると、

間接ビリルビン優位の上昇→Gilbert症候群やCrigler-Najjar症候群が考えられる

→頻度的・年齢的に考えるとGilbert症候群

→UGT1A1活性が低い

→イリノテカンの副作用リスク大

 

豆知識ですが、抗てんかん薬のフェノバルビタールはCYP酵素を誘導することが知られていますが、UGT1A1も誘導されるため体質性黄疸の治療に使われることもあるようです。

いろんな観点から症例をみると学びが多くて楽しいです。

以上となります。

最後まで読んでいただき有り難うございます。

少しでも参考になれば幸いです。

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