悪性症候群と悪性高熱症の違い

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精神科

名前がよく似ていてごっちゃになるシリーズです。悪性症候群と悪性高熱症、どう違うのでしょうか?

違いについて調べてまとめてみました。

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悪性症候群と悪性高熱症

早速まとめです。

薬が違う→遭遇する診療科も違います。

悪性症候群:ドパミンの急激な遮断・減量(D2遮断薬開始もしくはレボドパ中断)。主に精神科

悪性高熱症:リアノジン1受容体の遺伝子異常+ハロタンもしくはスキサメトニウム。麻酔科

 

どっちがどっちか分からなくなった方へ。

精神科や脳神経内科では『◯◯症候群』と命名されている疾患が多いですよね?それと関連付けましょう。

悪性症候群

症状:発熱、振戦・筋固縮、意識障害

抗精神病薬などのドパミン受容体遮断薬を開始したり、レボドパなどのドパミン作動薬を中断したりすると起こる症候群。精神科や脳神経内科で遭遇します。

詳細な機序は不明ですが、ドパミンが急激に減少することで起こってきています。

また、ドパミンが減少することで起こっているのでドパミン受容体刺激薬を用いることもあります。

悪性高熱症

症状:発熱、筋硬直

下の図に出てくる筋小胞体のカルシウムチャネルであるリアノジン受容体の遺伝子異常がベースにあります。→頻度としては7400例に1例とまれ。

その異常を持つ患者さんにハロタン(吸入麻酔薬。今はほぼ使われてない)やスキサメトニウム(脱分極性筋弛緩薬)を用いることで症状が起こります。

遺伝子異常がベースにあるため、麻酔科の先生方が問診で本人や家族の手術での悪性高熱歴を確認しています。

治療薬は共通!ダントロレン

薬がみえる vol.1 より引用

ダントロレンはリアノジン受容体に結合することで、筋小胞体からのカルシウム放出を抑制→筋収縮を抑制します。

悪性症候群、悪性高熱症いずれにおいても筋の異常な収縮が起こっているのでダントロレンが効きます。

理解度を国家試験問題で確認!

第113回医師国家試験 F56より引用

1歳の男児。停留精巣の手術のため手術室に入室した。麻酔はマスクで酸素と揮発性吸入麻酔薬を投与し、ゆっくりと入眠させる緩徐導入で行った。静脈路を確保し、気管挿管のため筋弛緩薬を静注したところ、突然心拍数が120/分から160/分に増加した。気管挿管時に開口障害があり、気管チューブの挿入に難渋した。人工呼吸開始後に尿道カテーテルを挿入したところ、赤褐色の尿が排出された。その後体温は急上昇し37.0℃から40.0℃になった。動脈血ガス分析で代謝性アシドーシスを認めた。

最も考えられるのはどれか。
a 敗血症
b 尿路出血
c 腎盂腎炎
d 悪性高熱症
e 悪性症候群

正解・解説はこちら

正解はdです。

開口障害→筋剛直、高熱、赤褐色尿→ミオグロビン尿疑いなどから悪性高熱を想起します。悪性高熱では体温が高いため代謝が亢進し酸素消費が増大し代謝性アシドーシスとなることも矛盾しません。


第105回医師国家試験 B56より引用

75歳の男性。不穏状態のため家族に伴われて来院した。
現病歴:3年前からParkinson病の診断で内服治療中であった。1週前から水様下痢と微熱とがあり、食欲がなく水分摂取も不十分であった。3日前から内服をすべて中断している。昨日から39℃台の発熱が出現し、身体が硬くなって起き上がることができなくなった。眼前に小さな虫がいると言い、振り払うような動作を繰り返し、徐々に不穏状態となってきた。
既往歴:5年前から脂質異常症で内服治療中。
生活歴:72歳の妻との2人暮らし。喫煙は20歳から20本/日を30年間。飲酒は週に1回、日本酒2合程度。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識レベルはJCS II-20。身長164cm、体重52kg。体温39.2℃。脈拍124/分、整。血圧86/60mmHg。口腔内は乾燥している。四肢に強い筋強剛があり、右上肢に静止時振戦を認める。腱反射は正常である。
検査所見:血液所見:赤血球508万、Hb 14.8g/dL、Ht 48%、白血球9,500、血小板22万。血液生化学所見:血糖86mg/dL、HbA1c 5.1%(基準4.3~5.8)、総蛋白7.2g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素56mg/dL、クレアチニン1.4mg/dL、尿酸8.9mg/dL、総コレステロール160mg/dL、トリグリセリド156mg/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST86U/L、ALT40U/L、LD 420U/L(基準176~353)、ALP 180U/L(基準115~359)、CK 820U/L(基準60~196)、Na 147mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 9.2mg/dL。CRP 1.2mg/dL。胸部エックス線写真に異常を認めない。
この患者の病態の誘因として考えにくいのはどれか。

a 脱水
b 感染症
c 低栄養状態
d 抗Parkinson病薬の中断
e HMG-CoA還元酵素阻害薬の内服

正解・解説はこちら
正解はeです。

パーキンソン病の治療薬を中断した病歴と、それに引き続いて39℃台の発熱、パーキンソニズムの増悪、CKの上昇から、悪性症候群を考えます。

勝手に中断しないようにという指導は、私が薬剤師の頃、患者さんに口を酸っぱくして言い続けてきた内容です。

明らかに病態の異なる横紋筋融解症のことを指すeが答えとなります。


いかかでしたでしょうか。

少しでもお力になれれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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