7月3日、セルジーン社の抗悪性腫瘍剤イストダックス®(ロミデプシン)点滴静注用10mgの製造販売承認が下りました。
何の疾患に適応があるのか?
適応は、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫です。
末梢性T細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫の一種で、リンパ球であるT細胞から発生する非ホジキンリンパ腫です。
月単位で進行する予後不良の難治性疾患です。
これまでの治療はどうだったのか?
一次治療のCHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)が用いられていますが、治療効果は必ずしも良好ではありませんでした。
二次治療以降の標準治療も確立されていないこともあり、治療の選択肢が限られていました。
ロミデプシンの作用機序
イストダックスは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害することによってヒストンなどの脱アセチル化を阻害します。
この阻害により、がんの細胞周期の停止や細胞死が誘導し、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
イストダックス®点滴静注用10mg インタビューフォームより引用
DNAの転写・翻訳のおさらい
遺伝子がタンパク質として発現するためには、転写・翻訳される必要があります。
転写が進行するためには、転写因子がDNAに結合する必要があります。
DNAと塩基性タンパク質のヒストンを合わせたものをクロマチンといいます。
凝集したクロマチン構造では転写因子がDNAに結合しにくいため遺伝子が発現しにくい状態です。
一方で、開いたクロマチン構造では転写因子がDNAに結合しやすいため遺伝子が発現しやすい状態です。
これらのクロマチン構造を変換するのがヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とヒストンアセチル化酵素です。
ヒストンタンパク質を構成している塩基性アミノ酸のリジンはアミノ基を持ち、生体pHでは正に荷電していますが、そこに電子供与性のアセチル基が結合することでヒストンの正電荷が弱まり、酸性で負に荷電しているDNAと解離しやすくなり、クロマチン構造は緩みます。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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