慢性期病棟や在宅など褥瘡に遭遇する場面があると思います。臨床的にも重要なため、国家試験でも問われやすいところです。
医師国家試験でも治療法やリスクファクターを問われることはありますが、具体的な治療薬についてきかれることはあまりないので記事にしてみました。
褥瘡についておさらい
定義・好発部位
骨が出っ張っているところは特に圧迫されやすいため、仙骨部や踵骨部、肩甲部、大転子部などに好発します。
治癒過程
ここは大事なのでゴロを作っておきました!
く:黒色
き:黄色
あ:赤色
し:白色
お笑い芸人の野生爆弾のくっきーさんをイメージしました。
ざっくりした治療方針
前半と後半に分けると見通しが立ちやすいです。
すべての過程で被覆材(ドレッシング材)を用います。
基剤の性質からもアプローチ!
https://www.maruho.co.jp/medical/products/actosin/special/ より引用
薬剤というのは、主薬+基剤で構成されています。
主薬はメインの作用を発揮する成分で、基剤は主薬を溶かして使いやすい形状に保つサブの成分です。
基剤は親水性と疎水性に大きく分けられます。
親水性のものは滲出液を吸収する作用があります。
疎水性は水を弾くために患部を保湿する作用があります。
そのため、
滲出液多い時→親水性基剤(マクロゴールや白糖、精製ラノリン)
滲出液少ない時→疎水性基剤(白色ワセリン、パラフィン、ミツロウ)
ということになります。
親水性基剤は、名前の印象から連想して覚えました。マクロゴール→マグロ、ラノリン(語感がサラッとしてる)という感じです。
用途別
壊死組織の分解 | ブロメライン、スルファジアジン銀、フラジオマイシン硫酸塩・結晶トリプシン |
感染対策 | ヨードコート、スルファジアジン銀、フラジオマイシン硫酸塩・結晶トリプシン |
創面保護 | アズレン、酸化亜鉛 |
上皮形成促進 | ブクラデシンNa、プロスタグランジンE1、トレチノイントコフェリル、リゾチーム塩酸塩 |
こちらは用途別にまとめてみました。
国家試験問題で理解度チェック!
第101回薬剤師国家試験 問279
78歳女性。アルツハイマー型認知症と診断され、処方薬見直しのため入院していた。退院の際、仙骨部に発赤が見つかった。医師から家族に対し褥瘡のリスクについて説明があり、下記の薬剤が処方された。
本剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 本剤3 g中にジメチルイソプロピルアズレンが10 mg配合されている。
2 白色ワセリンは、水溶性基剤である。
3 精製ラノリンは、吸水能を有する。
4 2種の軟膏基剤のうち、白色ワセリンの方が強い乳化作用を示す。
5 主薬が水にほとんど溶けないことが、本軟膏基剤が選択されている理由の1つである。
薬剤師国家試験第102回 問219
75歳女性。脳梗塞で寝たきりとなり、仙骨部に褥瘡を形成したことから、褥瘡対策チームが対応した。なお、本患者には、心機能、肝機能、腎機能及び甲状腺機能の低下や各臓器からの出血はいずれも認められていなかった。褥瘡患部は、乾燥した厚い黒色壊死組織を形成し(黒色期)、滲出液はほとんどなかった。褥瘡対策チームにおいて薬剤師が処方薬を提案し、下記の経緯で治癒に至った。AからCに入る薬剤として最も適切な組合せはどれか。1つ選べ。
(A)が処方され、数日間塗布した後、医師により壊死組織が切除された。その後、黄色壊死組織(黄色期)はわずかになり滲出液を伴う赤色肉芽が見られたため(赤色期)、滲出液の吸収と肉芽形成を目的として、(B)へ処方変更となった。(B)は、ガーゼに薄くのばして、貼付した。数日後、肉芽が盛り上がり滲出液は減少してきた。湿潤を保持しながら創傷部周囲からの上皮化(白色期)を促進させる目的で(C)を塗布し、治癒へと至った。
第103回薬剤師国家試験 問198
83歳男性。高齢者介護施設に入所しているが、肺炎のため入院となった。入院時、仙骨部に褥瘡が認められたことから、褥瘡ケアチームが対応した。感染の可能性がある黄色の浸出液が多かったため、精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏を滅菌ガーゼに塗布し、創部への貼付処置をした。1週間後、褥瘡の診断を行ったところ、黄色の浸出液はなくなり、一部が黒色化した壊死組織と褥瘡部分の両方に乾燥傾向が認められた。
褥瘡ケアチームによる壊死組織に対する治療方針として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏による治療を継続し、さらに創部を乾燥させてから壊死組織を除去する。
2 創部の状態にかかわらず、壊死組織は速やかに除去する。
3 薬剤を使用せずガーゼのみを貼付し、創部が乾燥してから壊死組織を除去する。
4 スルファジアジン銀クリームを塗布し、創部の水分をコントロールしつつ、壊死組織を軟化させてから除去する。
5 壊死組織は、褥瘡面の上皮化か完了すると瘡蓋となって剥がれ落ちるため、処置を行わない。
第104回薬剤師国家試験 問280〜281より引用
80歳女性。老人福祉施設に入所中に仙骨部に褥瘡を認めた。経過を観察していたが、改善しなかったため、褥瘡の治療目的で入院となった。入院当初、創部は滲出液が多く、黒色の壊死組織を伴っていた。
患者の創部に塗布する外用剤の基剤として最も適しているのはどれか。1つ選べ。
1 白色ワセリン
2 単軟膏
3 流動パラフィン
4 サラシミツロウ
5 マクロゴール軟膏問281
2週間後の褥瘡対策チームによる回診で、患者の創部に壊死組織はほとんど見られず、滲出液の減少、赤色期の肉芽形成の開始が確認された。褥瘡対策チームの薬剤師は、今後の治療で必要な外用剤の提案を求められた。推奨する薬剤として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 トレチノイン トコフェリル軟膏
2 フラジオマイシン硫酸塩・結晶トリプシンパウダー
3 ヨードホルムガーゼ
4 ブロメライン軟膏
5 アルプロスタジル アルファデクス軟膏
第105回薬剤師国家試験 問328
86歳男性。脳梗塞のため在宅療養中である。薬剤師が訪問した際、仙骨部に褥瘡があることがわかった。褥瘡の状態は、滲出液を伴う赤色肉芽(赤色期)が主で、壊死組織(黄色期)はわずかであった。薬剤師が医師に処方提案する医薬品として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 酸化亜鉛軟膏
- スルファジアジン銀クリーム
- 精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏
- アルプロスタジルアルファデクス軟膏
- ジメチルイソプロピルアズレン軟膏
以上となります。
最後まで読んでいただき有り難うございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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