投与される薬剤が肝代謝型なのか腎排泄型なのかを判断できるようになれば、投与量の調節だったり、投与可否の判断に役立つほか、薬の使い分けも理解しやすくなります!
それでは見ていきましょう。
分配係数(脂溶性 or 水溶性)
n-オクタノール/水分配係数を見る。
各薬剤のインタビューフォームの「有効性に関する項目」に記載されています。割と前のほうにあります。
レクサプロ錠10mg インタビューフォーム より引用
この数字はシンプルに油/水のどちらに溶けやすいかという性質を表します(オクタノールは油)。
イメージとしては、オクタノールと水の入っているフラスコに薬を入れて、オクタノール層と水層のそれぞれの薬の濃度を調べるものです。
・水層に多い→ 係数が1より小さいなら水溶性
対数表示の場合もあります
対数logをとった、logPで記載されている場合もあります。
その場合には、log関数のグラフを思い出してください
分配係数Pが1より小さいならlogPは負の値
参考程度ですが、薬剤が脂溶性なのか、水溶性なのかでもおおよその判断ができます。ちなみに、
核内受容体と結合してCYPなどの薬物代謝酵素を誘導する薬剤は脂溶性の傾向があります。
テグレトール インタビューフォームより引用
注意!
脂溶性であることと、肝代謝型であることはある程度相関しますが、完全に一致はしないので、あくまでも参考程度に。
尿中未変化体排泄率
上記の分配係数よりも確度の高い指標となります。
体循環に入った薬のうち、代謝されずに未変化体のまま尿中に排泄される割合をさします。
尿中未変化体排泄率(fu)=尿中の未変化体排泄量/(バイオアベイラビリティ×投与量)
・0.7(70%)以上なら腎排泄型
・0.3(30%)以下なら肝代謝型
・0.3〜0.7は肝・腎両方が関与
※ただし、バイオアベイラビリティを忘れないで!
バイオアベイラビリティをかけてから検討しないと腎排泄型か見間違うことがありますので注意!
実際にみていきましょう。
ゾビラックス錠 添付文書 より引用
これだけ見ると、「尿中未変化体排泄率が30%未満だから腎排泄型じゃない」と判断してしまいます。
バイオアベイラビリティが計算式に入っていることを思い出してインタビューフォームを参照すると、「バイオアベイラビリティは10〜20%」という記載を見つけられます。
投与量の10〜20%しか体内に入っていないのに、12や25%尿中に排泄されているならばそれは完全な腎排泄型薬剤ですよね。
そのほか、活性代謝物もみておく!
また、代謝物に活性がある場合、未変化体だけでなくその活性代謝物の尿中未変化体排泄率を考慮する必要があります。
活性代謝物の量を未変化体の量に足して計算します。
例えば投与量を100%として、バイオアベイラビリティ90%、尿中に未変化体40%、活性代謝物が30%の薬剤があったとしましょう。
単純に尿中未変化体の割合だけみると肝臓と腎臓の両方で排泄される薬剤と思ってしまいます。
しかし、活性代謝物を計算に入れると
fu=(未変化体0.4+活性代謝物0.3)/(0.9×1)=0.78
数値が0.7以上なので腎排泄型と判断できます。
活性代謝物を考慮しなかったら肝腎のハイブリッドと勘違いしてしまいますので注意が必要です!
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