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グリメピリドとグリクラジドの違い

2016年1月1日

糖尿病治療において、以前は最もよく使われていたSU薬。ですが、それぞれの薬剤の違いについては作用時間と強さくらいしかわかっていませんでした。

ある時、92歳の高齢女性が心筋梗塞をきっかけにグリメピリドからグリクラジドへ変更になっていたのですが、その変更理由がわからなかったため調べてみました。

 

まずはSU薬をおさらい

レジデントノート増刊 Vol.19 No.11
「糖尿病薬・インスリン治療 知りたい、基本と使い分け」より引用

SU薬は膵β細胞のATP感受性Kチャネル=SU受容体1を遮断してインスリン分泌を直接促進します。そのため血糖値には依存せずインスリンを分泌するため低血糖リスクが高い薬剤です。

どっちが新しいのか?

<第1世代>
トルブタミド
アセトヘキサミド
クロルプロパミド
グリクロピラミド

<第2世代>
グリベンクラミド
グリクラジド

<第3世代>
グリメピリド

グリクラジドは第2世代、グリメピリドは第3世代のSU薬でした。

 

薬物動態の観点

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「症例から学ぶSOAPワークブック:薬剤師が行う薬物治療マネジメント」より引用

画像ではグリメピリドが第2世代となってしまっていますが少し古い資料なので、そこはご了承ください。

グリクラジドもグリメピリドどちらも尿中未変化体排泄率(Ae)は0%であり、腎排泄ではないことがわかります。

ですが腎不全ではSU剤は禁忌と大学で習ったことと思います。これは、体内に入った薬物がほとんど水酸化などの修飾を受けて、尿中および胆汁から排泄されているためと思われます。下を参照。

アマリール錠 インタビューフォームより引用

更に細かくみていくと、グリクラジドにもグリメピリドにも活性代謝物が存在するのですが、その活性と排泄経路が異なっています。

グリクラジドの活性代謝物には活性がないのに対して、グリメピリドは活性代謝物が存在し、かつその活性代謝物の排泄経路に腎が大きく関与しています(60%)。

事実Kidney Diseases Outcomes Quality Initiativeガイドラインにもグリクラジドは代謝物の活性が非常に弱いため透析患者においても利用可能とされています。

KDOQI CLINICAL PRACTICE GUIDELINE FOR DIABETES AND CKD: 2012 UPDATE

 

今回の症例ではカルテをみてみると28mL/minと高度に腎機能が低下していました。

グリメピリドでは活性代謝物が滞留して遷延性低血糖を引き起こすこと可能性があり、それを予防するためにもグリクラジドを選択したのだと思われます。

有機化学の観点

思い出していただきたいのは、SU薬はATP感受性Kチャネルを遮断してインスリン分泌を促進していたということです。

Kチャネルといえば、抗不整脈薬でも出て来ましたね。心筋にもKチャネルは分布しています。

SURのサブタイプとその分布

SUR1   (SU結合部位+ベンズアミド結合部位を持つ) 膵臓β細胞
SUR2A(ベンズアミド結合部位のみ持つ) 心筋細胞
SUR2B(ベンズアミド結合部位のみ持つ) 血管平滑筋細胞

ここでは、心筋に分布しているSU受容体2Aにはベンズアミドが結合する部位のみがあるということをおさえてください。

ここに載せたSU受容体にはすべてベンズアミド結合部位があります。

それぞれの構造からみる

グリクラジドの構造

SU骨格を持つものの、ベンズアミド構造を持たない

⇒SUR2Aには結合しづらい=SU受容体1(膵β細胞)に対する選択性が高い。(Neuron 16:1011-1017, 1996)

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グリミクロン 添付文書より引用

 

グリメピリドの構造

ベンズアミド類似構造を持つためSU受容体(SUR)のSU結合部位だけではなく結合力は弱いものの、ベンズアミド結合部位とも結合する。

⇒すべてのSU受容体に結合しやすい=非選択的

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アマリール 添付文書より引用

 

 

SURサブタイプへの選択性による作用の違い 

心筋細胞に分布するSU受容体2Aへ作用すると、虚血プレコンディショニング(一度虚血状態を経験することで、心筋梗塞を起こした際の梗塞部位を少なくするという虚血耐性)を阻害し心筋保護作用を減弱してしまうことが懸念されています。

そのため、SUR1への選択性の高いグリクラジドが心血管疾患を合併した患者に使いやすいという点があるのかもしれません。

 

他の文献ではどうなっているのか

実際に文献を調べてみると、心筋梗塞の既往あるなしに関わらず、
グリメピリドは有意に約1.3倍心血管死のリスクが高いが、
グリクラジドは有意ではなく、リスクが高くなる傾向もなかったという結果が報告されています。

Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a pre… – PubMed – NCBI

日本人の報告では以下のようなものもありました。

グリクラジドで心血管死のリスクが高くならなかった背景には、グリクラジドの血小板凝集抑制効果や、フリーラジカル除去効果、血清脂質改善効果によるものかもしれない

伊集院太生 2015 スルホニル尿素薬の差別化-グリクラジドとグリメピリドをいかに使い分けるか?- Progress in Medicine,35巻 7号 より引用

低血糖の頻度も異なる

重篤副作用疾患別対応マニュアルの「低血糖」にもデータがありました。グリメピリドにはマイルドな印象を持っていましたが、低血糖頻度はグリクラジドよりも高いようですね。

厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 低血糖 平成23年 より 引用

 

まとめ

以上の観点からグリメピリドからグリクラジドへ変更されたと考えられます。

薬局薬剤師は専門性を持たず、どの診療科の薬剤に対しても知識を持っていることが重要ですが、こうした専門医の深い知識には頭が下がります。負けじと努力を続けたいと思います。

 

参考文献

いずれの書籍もわかりやすく、実践的かつ安いのでオススメです。

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医学部へ学士編入した薬剤師です。医学や薬学について書いています。ご質問やご指摘があればお気軽にどうぞ。