腎機能悪いのにモルヒネ増量??
医師国家試験を勉強していて、自分の薬剤師の知識が中途半端なばっかりに、みんなが簡単に正答する問題につまづいてしまうことに気付きました。
モルヒネ増量vsフェントステープ
医師国家試験 106E41
74歳の男性。背部痛と呼吸困難とを主訴に来院した。膵体部癌切除術後に有痛性の多発性肺転移をきたしたが積極的な治療は望まず、1か月前から自宅近くの診療所で経口モルヒネを処方され内服していた。5日前に体動時の背部痛を認め、それを契機に徐々に息苦しさを感じるようになったため紹介されて受診した。意識は清明。身長164cm、体重48kg。体温36.7℃。脈拍76/分、整。血圧120/70mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97%(room air)。血液所見:赤血球302万、Hb 7.8g/dL、Ht 29%、白血球2,600、血小板8.0万。血液生化学所見:総蛋白5.8g/dL、アルブミン2.7g/dL、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.4mg/dL、総ビリルビン2.1mg/dL、AST 47U/L、ALT 68U/L、ALP 378U/L(基準115~359)、γ-GTP 67U/L(基準8~50)。食事の経口摂取は可能で、食欲も保たれている。
現時点の対応として適切なのはどれか。a 胸腔穿刺を行う。b 経口モルヒネを増量する。c 在宅酸素療法を導入する。d 医療用麻薬の貼付剤を追加する。e 本人の意思に反して抗悪性腫瘍薬を投与する。
残りはモルヒネ増量と医療用麻薬の貼付剤(フェントステープ®︎)のどちらかです。薬剤師的には、モルヒネ増量の際には腎機能をチェックしたくなります。
薬剤師国家試験では常識のクレアチニンクリアランス推算式 (Cockcroft-Gaultの式)を使ってみます。
- 男性:(140 – 年齢) × 体重 / (72 × 血清クレアチニン値)
- 女性:0.85 × (140 – 年齢) × 体重 / (72 × 血清クレアチニン値)
推算のクレアチニンクリアランスは31.42mL/minでした。モルヒネはクレアチニンクリアランス30以下では代謝産物が蓄積してせん妄などの副作用が多くなるため原則的に使用しません。
ギリギリ30を下回ってないとはいえ、モルヒネ増量は少し選びづらくなりました。
一方の医療用麻薬の貼付剤は肝代謝型なので腎機能を気にする必要がありません。一見こちらの方が良いような気がしますが迷います(というか前に解いた時は腎障害を見てこっちを反射的に選んでしまいました)。
そこで主訴に立ち戻ってみると呼吸困難感です。背部痛にはモルヒネ、フェンタニルのどちらも有効ですが、呼吸困難に効くのはモルヒネのみです。
各予備校の解説にはモルヒネとフェンタニルの違いについては触れられてなかったのでここに書いておきます。排泄経路と適応症、これらの薬剤師知識が中途半端だったために間違えてしまったもったいない問題でした。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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