抗認知症薬の違い・使い分け

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作用機序
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認知症に承認されている薬はドネペジル(アリセプト®️)、リバスチグミン(リバスタッチ®️・イクセロンパッチ®️)、ガランタミン(レミニール®️)、メマンチン(メマリー®️)の4つがあります。

これらの薬の特徴や違いは何でしょうか??

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抗認知症薬の違い

メマンチンドネペジルリバスチグミンガランタミン
作用機序NMDA受容体拮抗AChE阻害AChE阻害
+BuChE阻害
AChE阻害
+ニコチン性ACh受容体増強作用
作用の方向性鎮静興奮
アルツハイマー型
認知症の適応
中等度〜高度軽度〜高度軽度〜中等度軽度〜中等度
レビー小体型
認知症の適応
用法1日1回1日1回1日1回1日2回
剤型錠剤錠剤・口腔内崩壊錠・細粒・ゼリーパッチ剤錠剤・口腔内崩壊錠・液剤
代謝経路腎排泄肝代謝肝代謝肝代謝・腎排泄
副作用めまい・便秘・眠気下痢・嘔気・興奮かぶれ・かゆみ下痢・嘔気
適している患者攻撃性意欲低下嚥下障害
服薬拒否
BPSD
ポイント
・高度アルツハイマー型認知症に使えるのはドネペジル、メマンチン。
・攻撃性など興奮のある患者にはメマンチン。
・嚥下障害や服薬困難例には唯一の貼付剤であるリバスチグミン。
・BPSDなど周辺症状が強い患者にはガランタミン。

基本的に作用機序をおさえておけば導ける内容が多いです。

メマンチンはNMDA受容体を遮断してCaの流入を抑制するため神経細胞を鎮静させる効果があるため、興奮性の患者に適しています。

ガランタミンはニコチン性ACh受容体を賦活させる作用があるため、その受容体が存在している様々な神経から伝達物質を分泌させることができます。それによってBPSD改善効果があると考えられています。

https://www.igaku.co.jp/pdf/1205_medicinal02.pdf より引用

興奮性が高い場合には補助的にこちらも使います

抑肝散(甘草が含まれており偽アルドステロン症による低K血症に注意)

抗ヒスタミン作用や抗アドレナリン作用のある抗精神病薬は鎮静作用があるので用いられます。リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾールなど。クエチアピンなどのMARTAは高血糖に注意。

Child-Pugh分類で減量の必要性をチェック

ガランタミンはこれらの薬の中で唯一、肝障害の際の減量基準が明確にされています。それがChild-Pugh分類です。

中等度の肝障害患者(Child-Pugh分類B)では、4mgを1日1回から開始し少なくとも1週間投与した後、1日8mg(4mgを1日2回)を4週間以上投与し、増量する。ただし、1日16mgを超えないこと。」とされています。

https://www.aska-pharma.co.jp/kansikkan/disease/13.html より引用

2点の列だけ覚えると、それより高いか低いか判断できるので覚える量が少なくて済みます。

実際に計算してみましょう。問題を作ってみました。

医師国家試験 105B50より改変

76歳の男性。物忘れを主訴に家族に連れられて来院した。
現病歴:10年前に自宅近くの医療機関でB型慢性肝炎と診断され、ウルソデオキシコール酸を服用していた。自覚症状は特にない。
生活歴:飲酒は機会飲酒。
既往歴・家族歴:特記すべきことはない。
現 症:意識は清明。身長176cm、体重64kg。体温36.4℃。脈拍76/分、整。血圧132/68mmHg。腹部は平坦で、心窩部に肝を1cm触知するが、圧痛を認めない。左肋骨弓下に脾を1cm触知する。下肢に浮腫を認めない。呼気中にアンモニア臭を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球311万、Hb 10.9g/dL、Ht 32%、白血球3,600。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン2.6g/dL、クレアチニン0.8mg/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 84U/L、ALT 68U/L、ALP 220U/L(基準115~359)。免疫学所見:HBs抗原陽性、HCV抗体陰性、AFP 140ng/mL(基準20以下)。PT 68%、血漿フィブリノゲン108mg/dl(基準 200〜400)。アンモニア 10μg/dL(基準12〜60)。

改定長谷川式簡易知能評価スケールは11点(30点満点)、Mini-Mental State Examination14点(30点満点)であった。中等度のアルツハイマー型認知症と診断され、ガランタミン臭化水素酸塩が処方されることとなった。投与量は以下のうちどれが適切か1つ選べ。

a.投与しない
b.1日4mg
c.1日8mg
d.1日16mg
e.1日24mg

Child-Pugh分類の覚え方は「ビア腹のPt」なので、その順にみていきます。

総ビリルビン:2点は2〜3mg/dlですが、0.9mg/dlとそれ未満なので1点

アルブミン:2点は2.8~3.5mg/dlですが、2.6mg/dlとそれ未満なので3点

腹水:2点は少量ですが、記載はなく腹部は平坦なのでおそらく無いのでしょう、1点

脳症:2点はⅠ、Ⅱ度ですが、意識は清明でアンモニアも蓄積していないので1点

PT:2点は70〜40%ですが、68%なので2点

合計8点なのでChild-Pugh分類Bとなりますので、通常の4mg錠を1日2回のところを1日1回にするので1日4mgが正解となります。

国家試験問題で理解度をチェック!

第99回薬剤師国家試験 問256

80歳女性。軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、ドネペジル塩酸塩(5 mg/日)で内服治療を続けてきた。認知症が進行し、10 mg/日に増量しても効果が認められなかった。そのため医師より中等度から高度アルツハイマー型認知症の適応をもつ併用可能な薬剤の相談を受けた。

推奨すべき薬剤の成分はどれか。1つ選べ。

 ガランタミン臭化水素酸塩
 リバスチグミン
 メチルフェニデート塩酸塩
 メマンチン塩酸塩
 アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物

 

正解は4です。

高度のアルツハイマー型認知症に使えるのはドネペジルとメマンチンだけです。


第100回薬剤師国家試験 問294
84歳女性。女性の家族が近所の保険薬局に処方せんを持参した。
最近になって女性の記銘力低下(物忘れ)が気になり脳神経外科を受診したとのことであった。医師により軽度のアルツハイマー型認知症と診断され今回が初回投薬となった。その処方内容は次の通りであった。
(処方1)
ドネペジル塩酸塩錠5mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 7日分
(処方2)
レバミピド錠100mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 7日分
薬剤師がこの処方せんを確認して調剤を行う場合、その対応として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
なお、ドネベジル塩酸塩錠は3 mg、5 mg、10 mg 錠が製品化されている。
1 ドネペジル塩酸塩錠は3mg から開始するので医師に疑義照会した。
2 ドネペジル塩酸塩錠は5mg が維持量なので問題はないと判断した。
3 ドネペジル塩酸塩錠は初回負荷量として 10mg を投与するので医師に疑義照会した。
4 ドネペジル塩酸塩錠とレパミピド錠の併用は禁忌なので医師に疑義照会した。
5 レパミピド錠は神経系の副作用軽減を目的とすることを説明した。

 

正解は1です。

いずれの抗認知症薬も副作用が出現しないように漸増して使用します。

ドネペジルは消化器副作用が多いため、その軽減目的にレバミピドが併用されています。


以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも参考になれば嬉しいです。

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