ステロイドは強皮症腎クリーゼのリスク

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免疫・膠原病

ステロイドが強皮症腎クリーゼのリスクであるという問題が、最近医師国家試験や薬剤師国家試験でよく出題されるので備忘録として記事にしてみました。

出題された問題を見てイメージできるようにしておきましょう。

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国家試験問題で理解度をチェック

医師国家試験 113A17

29歳の女性。頭痛を主訴に来院した。2年前に手指の腫脹、皮膚硬化を自覚し、自宅近くの医療機関で精査を受けた結果、全身性強皮症と診断された。プレドニゾロン20mg/日を開始され、手指の腫脹と硬化は軽快した。プレドニゾロンは漸減され、5mg/日で維持されていたが、3か月前に皮膚硬化の増悪を認めたため、10mg/日に増量されていた。昨日から頭痛を自覚したため受診した。体温36.7℃。脈拍72/分、整。血圧172/108mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。両手指、前腕部および前胸部に皮膚硬化を認める。下腿に浮腫を認めない。血液所見:赤血球343万、Hb 10.5g/dL、Ht 32%、白血球11,200(桿状核好中球32%、分葉核好中球45%、好酸球1%、好塩基球0%、単球5%、リンパ球17%)、血小板43万。血液生化学所見:尿素窒素45mg/dL、クレアチニン1.5mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 108mEq/L。抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性。

まず行うべきなのはどれか。

 緊急透析
 皮膚生検
 α遮断薬投与
 ステロイドパルス療法
 アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬投与
正解・解説はこちら
正解はeです。

強皮症と診断された女性の頭痛と高血圧、クレアチニンが1.5mg/dLと腎障害がみられています。この時点で強皮症腎クリーゼの可能性を疑います。

また、RNAポリメラーゼIII抗体陽性とステロイドは強皮症腎クリーゼのリスクと考えられています。

強皮症腎クリーゼは弓状動脈や葉間動脈レベルのびまん性の内腔狭小化が病態で、レニン・アンジオテンシン系が亢進します。

そのため、レニン・アンジオテンシン系抑制と腎保護作用のあるACE阻害薬投与が正解となります。

ちなみに、dのステロイドパルスは投与後数日で血圧上昇の副作用がみられることに加え、高用量のステロイドは強皮症腎クリーゼのリスクでもあるため二重の意味で☓です。


 

薬剤師国家試験 106回 問263

50歳男性。身長165cm、体重65kg。膠原病として全身性強皮症と診断され、以下の処方で加療中である。

右つまさきや踵に潰瘍を認め、皮膚硬化の経過が思わしくないため入院治療を開始するにあたり、シクロホスファミドを処方することになったと医師より連絡があった。

薬剤師が医師に対して提案する内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. プレドニゾロン錠の減量・中止
  2. プレドニゾロン錠の増量
  3. シロスタゾール口腔内崩壊錠の増量
  4. シロスタゾール口腔内崩壊錠の減量・中止
  5. ベラプロストナトリウム錠の増量
正解・解説はこちら
正解は1です。

今回は強皮症腎クリーゼに至っていませんが、ステロイドでの皮膚症状のコントロールが不良だったためシクロホスファミドが追加投与されています。

上の医師国家試験の問題の通り、ステロイドは強皮症腎クリーゼのリスクですし、これは全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドラインにも記載されています。

同ガイドラインによれば、PSL 15mg/day以上がリスクが高いとされているため、減量します。

このことを知らなくても、相互作用はないのでシロスタゾールやベラプロストの量は変更しないと分かります。しかも免疫抑制剤を追加したのにステロイドまで増量とも考えにくいため消去法でも1を選ぶことができます。


以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも参考になれば幸いです。

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