2018年7月5日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で「薬局・薬剤師のあり方」について議論されましたが、ボコボコに言われていました。
「医薬分業自体を見直す時期」、中川日医副会長 医薬品医療機器制度部会、「薬局は今、危機にある」との意見も
薬剤師から医学生になった私はその経歴から薬剤師に否定的な意見を持っていると思われがちですが、ある条件付きで必要だと思っています。
医学生からすると薬剤師は必要
PMDAが公開しているこのデータをご覧ください。
これは薬局で疑義照会するに至った事例が紹介されています。これを見て以下のことを考えました。
忙しいほど処方ミスの可能性は上がる
今でも薬剤師としてアルバイトで働いていますが、大きな総合病院の門前であっても、クリニックの門前であっても、処方漏れだったり処方ミスはあります。
それは当然のことで、1日に何十人何百人診察している忙しい診療の合間に処方箋を書いているのですからヒューマンエラーも出てくると思います。それが患者さんに届く前に防ぐ薬剤師は必要だと思います。
他科の薬剤まで把握するのは難しい
そして、処方医は専門の診療科の薬剤については、薬剤師よりも詳しく深い知識をお持ちですが、他科の薬剤、その併用禁忌や併用注意まで把握しておくのは現実的に厳しいと思います。
自分が処方する側になった時でも、診断、検査結果の吟味、今後の見立て諸々を考えながら相互作用まで考慮するというのは、かなり大変だと思いますし、使わない知識は薄れていくのでモレが生じやすいかと思います。
実際、医師の友人が前立腺肥大症を問診で聞きそびれ抗コリン薬を処方してしまっていたものの、薬局で服薬指導の際に発見し感謝された経験があります。
薬剤師としては他科の併用薬を見ればその方の合併症の予想がたちますが、ただでさえ多忙な医師が他科の薬剤まで把握するのは困難だと思います。
セーフティネットとして薬剤師は必要だと思われます。
薬局薬剤師がボコボコに言われる理由
今回特に薬局薬剤師が叩かれています。
薬局では病院と違ってカルテを閲覧することができません。もちろん処方薬や患者さんの話から推測することはできても、正確な病名やその重症度はわかりません。
病態がわかっていないためその患者さん個人にあった服薬指導は難しく、一般的な説明にとどまっていることが多いのかもしれません。
一般的な説明にとどまるのならば、今の情報社会では患者さん自身が検索すれば必要な知識が得られるため薬剤師の意義が伝わらないのかもしれません。
薬局薬剤師の弱点
これは完全に私見ですし、私は薬局薬剤師も経験していたので自分の反省点でもあるのですが、薬局薬剤師は病院薬剤師に比べて勉強不足な印象を持ちます。
病院薬剤師と比べると医師からの問い合わせ頻度が少ないためか、同効薬の違いや使い分けに関する知識を持っていない方が多かった気がします。
そのためかわかりませんが、(病院薬剤師と接する機会の多い)勤務医の先生方は薬剤師への評価は高く、(薬局薬剤師と接する機会の多い)開業医の先生方の薬剤師への評価は低い傾向にあります。
処方医や患者さんからすれば、カルテを通して病態を把握していて、勉強していて知識の多い薬剤師の方が良い医療を受けられると考えるのは無理のないことかもしれません。
薬剤師のいない院内処方には私も危険性を感じますが、薬剤師の常駐している院内処方であれば院外処方よりも頼りになる印象があります。
悪循環から脱出してもっと上へ
日経メディカルのこちらの記事を読んでみてください。↓
医師以外の職種が主体的に治療方針を提案する新たなチーム医療の試み 看護師や薬剤師への不満がきっかけでした
医師からの問い合わせで「どの薬がいいと思う?」と尋ねられた時のことを思い出してください。いくつもある薬の中でどれを選ぶのか、何が違うのか、知識がなければ提案することができません。
一歩踏み出して薬物治療に責任を持ってみませんか?
副作用ひとつとってみても、副作用が発現していることはどう判断するのか、副作用が発現した場合の代わりの薬はどれを選択すべきなのか、必要な知識はたくさんあると思います。
処方箋通りに正確に迅速に調剤して薬歴を書いておけばいい時代は終わりました。
それだけしかしないのであれば生き残っていくのは厳しいと思います。
今後電子化が進み、保険証に処方データや検査値が紐づけられるようになればチェック機構としては迅速かつ正確性において機械に勝つことは難しいでしょう。
偉そうにつらつらと述べてきましたが、私自身は全然役に立たない薬剤師だったと思います。皆さんは薬物治療に貢献できる薬剤師を目指してください。
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