作用機序

SGLT2阻害薬の作用機序・副作用・エビデンス

2016年2月10日

SGLT2阻害薬とは

そもそもSGLTとは

ナトリウムーグルコース共役輸送体:SGLT(Sodium-GLucose co-Transporter)は、細胞外(尿細管)の高いNa+濃度と、細胞内の低いNa+濃度の差によりNa+が細胞内へ入っていく力を原動力として、一緒にグルコースを細胞内へ能動的に輸送するタンパク質です。

 

 糖の再吸収

近位尿細管の起始部(S1)に存在するSGLT2はろ過されたブドウ糖の90%を再吸収します。

吸収しきれなかったブドウ糖の残り10%を近位尿細管遠位側(S3)に存在するSGLT1が再吸収します。

グルコースは人体にとっては貴重なエネルギーであるため多く尿へ排泄されてしまったらそれを回収しようとします。

そのため尿糖が多く排泄される糖尿病患者の尿細管上皮細胞にはSGLT2の発現量が増加しています。

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スーグラ錠インタビューフォームより引用

 

 

SGLT2阻害薬とは

腎臓の近位尿細管に局在する、SGLT2を選択的に阻害し、余分なグルコースの再吸収を低下させ、尿と共に排泄させることで、血糖値を低下させる薬剤です。

 

SGLT1をなぜ阻害しないように設計したのか

SGLT1は小腸や骨格筋、脳にも発現しており、血糖が低い状態ではSGLT1を介した再吸収量が増えることが報告されています。

そのためSGLT1を阻害することで、小腸では糖の吸収阻害により浸透圧性の下痢を生じる恐れや、骨格筋や脳での未知の副作用が発現するリスク、また低血糖のリスクが懸念されます。

ですが、各薬剤ごとに選択性や阻害の度合いが異なり、カナグル®はSGLT1も阻害することで小腸での糖吸収抑制も利点になっています。

 

データから考えられること・副作用のモニタリング

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スーグラ錠 審議結果報告書より引用

他の経口糖尿病薬と同様に、HbA1c低下はおよそ1%

尿中へのグルコース排泄量は1日約80gほどであり、アトウォーター係数をかけると約320kcalのエネルギーの減少となり、その減少分を内臓脂肪から利用するため、脂肪減少や体重減少作用が認められています

SGLT2を阻害していることからNa排泄も増加すると予想したのですが、副作用に電解質異常はみられず、他の機構によって再吸収されていると思われます。

尿中への糖排泄が増えるため浸透圧利尿により、尿量が増加し、血圧低下作用もあるようです。尿量のデータを見るとばらつきがありますが、服用により1日200mL以上増加しているようです。

過度な利尿は脱水および血液の濃縮を惹起し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める恐れがあるため、服用開始後は通常より1日500mLほど多めの水分摂取を指導した方がよさそうです。

 

脱水のモニタリング

薬剤師をしていた当時は、以下のような項目をモニタリングしていました。

<検査値の紙を持参している時>

  • ヘマトクリット値
  • BUN/Cre比
  • 尿の比重

<検査値の紙を持参してない時>

  • 口渇、腋窩の乾燥
  • 立ちくらみ
  • めまい
  • ツルゴール反応の低下(目安程度)

有効性に関わる因子

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このデータからすると、腎機能が60mL/min/1.73m2以下の軽度腎機能低下患者と、30以上60未満の中等度腎機能低下患者では正常者に比べ、尿糖排泄量および排尿量が増加しておらず、血糖値も低下していません。

SGLT2阻害薬は作用を発揮するには一度尿細管へ分泌されてから、SGLT2へ結合する必要があります。

しかし、高度の腎機能低下例では原尿量の低下があり、尿糖が多く排泄されにくいため45mL/min/1.73m2以下の患者では薬効が得られにくいと考えられます。

 

エビデンス

心血管イベント抑制のエビデンス 2015年にEMPA-REG OUTCOMEが出されました。心血管疾患既往歴のある2型糖尿病患者約7000例を対象にした試験において、エンパグリフロジン服用群ではプラセボに比べ、心血管疾患死が約40%低い結果となりました。

 

対象者の背景が平均年齢60歳以上、BMIも30以上と、日本の患者背景とは異なる面が大きく、考えなしに日本人にこれを適用するのは早計ですが、これまで脱水リスクから心筋梗塞や脳梗塞既往例には投与しにくい印象だったSGLT2阻害薬が、副次的な利尿作用のためか大血管障害予防効果が出てくるなど印象が大きく変わりました。(これまではメトホルミンにしかエビデンスが認められていませんでした。) このベネフィットを得るためにも、副作用リスクによる治療からの離脱を回避する必要があります。

このように治療効果が新しい薬剤で、そのベネフィットを患者さんが得られるように、副作用によるドロップアウトを薬剤師の観点から防ぎたいと思います。

参考文献

・スーグラ錠 インタビューフォーム

・スーグラ錠 審議結果報告書(http://www.pmda.go.jp/drugs/2013/P201300172/800126000_22600AMX00009000_A100_1.pdf

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医学部へ学士編入した薬剤師です。医学や薬学について書いています。ご質問やご指摘があればお気軽にどうぞ。