2018年2月に、新しい作用機序の抗インフルエンザ薬が承認されました。
塩野義製薬の「バロキサビル マルボキシル」、商品名はゾフルーザです。
早速そのインタビューフォームを読み解いて、要点を抜粋していきたいと思います。
商品名の由来
XO(ノックアウト,~がない)+ インフルエンザ influenza = ゾフルーザ Xofluza
物理化学的性質
構造は以下の通りです。有機化学は苦手なのでなんとも言えません笑。
ゾフルーザ錠10mg、20mg インタビューフォーム より引用
プロドラッグであり、小腸などで加水分解を受けて活性体となります。左に飛び出ているマルボキシル
分子量:571.55
オクタノール/水分配係数:2.26 (1より大きい→脂溶性)
脂溶性であり、腎機能障害患者への減量の記載はありません。
作用機序
インフルエンザウイルスは、宿主の細胞の中で自らのRNAを複製しつつ、mRNAからウイルスタンパクを合成しなければ増殖できません。
RNAウイルスはおおよそ核の外で複製を行うのですが、インフルエンザウイルスは核の中で複製を行います。そのため、私たち真核生物と同じようにmRNAが核の外に出ても安定するようにキャップ構造が必要となります。
ウイルスがRNAを合成・翻訳するための条件
・合成を開始するためにはプライマーとなるRNAが必要
・mRNAを安定化させ、翻訳を開始するにはキャップ構造が必要
分子生物学の復習になりますが、ヒトmRNAは5’末端にキャップ構造があり、mRNAの安定性向上と、リボソームでの翻訳開始の役割を担っています。
そのため、インフルエンザウイルスは宿主であるヒトのキャップ構造を認識して、その部分を切断し、自分のものにします(①)。これを行うのがキャップ依存性エンドヌクレアーゼです。
更にそれをプライマーとしてRNAの伸長反応を進めていきます(②)。
まとめます。
ゾフルーザ ®(バロキサビル マルボキシル)は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害し、mRNA合成を阻害します。
mRNA合成を阻害→ウイルスタンパク合成を阻害→増殖を抑制します。
A型にもB型にも効きます。
用法・用量
1日1回の単回投与です。
ゾフルーザ錠10mg、20mg インタビューフォーム より引用
10kgなら10mg錠1つ、20kgなら20mg錠1つ、40kgなら20mg錠2つと考えると覚えやすいですね。
なにより1回で飲みきり終了という単回投与がありがたいです。メジコン錠のサイズくらいなので小児でも飲みやすいと思います!
薬物動態
吸収
空腹時投与と比べ食後投与で Cmax は 48%、AUC は 36%減少
なるべく空腹時が良さそうです。
分布
バロキサビル マルボキシル活性体のヒト血清蛋白結合率:92.9~93.9%
高度な肝機能障害ではアルブミン合成障害されフリー体が増えそうです。
代謝
In vitro 代謝試験において、バロキサビル マルボキシル活性体はUGT1A3 によりグルクロン酸抱合体に代謝され、CYP3A によりスルホキシド体に代謝されると推定されています。
排泄
健康成人男性 6 例に[14C]-バロキサビル マルボキシル 40mg を空腹時単回経口投与すると、投与された放射能の 80%が糞中、14.7%が尿中へ排泄。投与量の 3.28%が尿中にバロキサビル マルボキシル活性体として排泄
排泄は肝と腎のハイブリッド。加えて脂溶性だったことも合わせると、主に関与してくるのは肝臓かと思われます。
ゾフルーザ錠10mg、20mg インタビューフォーム より引用
中等度肝機能障害患者での Cmax 及び AUC0-inf は、肝機能正常者のそれぞれ 0.80 倍及び 1.1 倍。
副作用
国内臨床試験の際には、副作用として下痢(1%以上)、頭痛、ALTやASTの増加(各1%未満)が認められているようです。
効果発現
第Ⅲ相試験では、タミフルと比較して、罹病期間の短縮率は同等、ウイルス排出期間は有意に減少、薬剤の有害事象の発現率は有意に低い結果となっています。
作用機序から考えても、増殖後に出芽していくウイルスを抑制する従来のノイラミニダーゼ阻害薬と違って、増殖そのものを抑制するため、感染拡大を抑制することが期待できそうです。
今後の臨床試験の結果を待ちたいところです。
飲んだ体験から
テストが終わって長期休みの時期に薬局でバイトをしていたんですが、インフルエンザの小児が殺到し、防御していても感染してしまい、ゾフルーザを飲むことになりました。
サイズはとても小さく飲みやすいと感じました。主観ですが、イナビルと比べてゾフルーザ服用で発熱期間は短いように感じました。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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