制吐薬って種類がいろいろあって違いがわかりにくいですよね。まとめてみました。
まとめ
先にまとめです。これを見たあとで嘔吐の病態を見るとわかりやすいと思います。
状況 | 機序 | 対応する薬剤 |
化学療法の前 | 不安 | 抗不安薬 |
体動で増悪 めまいを伴う |
前庭神経 の刺激 |
第1世代抗ヒスタミン薬 |
持続的な嘔気 オピオイド服用後 |
CTZ の刺激 |
中枢性D2遮断薬 |
食後に増悪 便秘を伴う |
消化管蠕動 の低下 |
末梢性D2遮断薬 (消化管運動改善薬) |
上記が複合 | 複数の受容体 の刺激 |
多受容体作動薬(MARTA) or 複数の制吐薬の併用 |
嘔吐の病態
経路は大きく分けて4つです。
「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2011」より引用
嘔吐は延髄の嘔吐中枢に刺激が入ることで起こります。
①大脳皮質からの経路
物理的要因と精神的要因が嘔吐中枢を刺激します。
物理的要因
・脳梗塞や脳出血による脳浮腫、脳腫瘍による頭蓋内圧亢進
精神的要因
・不安
炎症による浮腫を改善するステロイドや、不安を軽減する抗不安薬が有効となります。
②化学受容器引金帯からの経路
延髄の第四脳室底に存在する化学受容器引金帯(chemoreceptor trigger zone:CTZ)は血液脳関門が存在せず様々な催吐性の刺激を受け、嘔吐中枢へと伝達します。
オピオイドや抗がん剤による嘔気などが該当します。
CTZにはドパミンD2受容体やセロトニン5-HT3受容体、ニューロキニンNK1受容体が存在するため、それらの受容体拮抗薬が有効です。
③前庭からの経路
前庭が体の動きや内耳障害により刺激され、アセチルコリンやヒスタミンのニューロンにより、嘔吐中枢を直接もしくはCTZを介して伝達します。
第一世代の抗ヒスタミン薬は中枢神経への移行性が良く、抗コリン作用も持っているため、乗り物酔いの予防や改善にも用いられます。
④消化管からの経路
胃内容物が停滞し、消化管の伸展・機械的刺激が起こり自律神経を介して嘔吐刺激が伝達されます。
D2遮断薬で末梢でD2受容体を遮断することでアセチルコリンが遊離され消化管運動が亢進します。
制吐薬一覧
ステロイド
デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン
5-HT3受容体拮抗薬
「○○セトロン」:オンダンセトロン、グラニセトロン
NK1受容体拮抗薬
「○○プレピタント」:アプレピタント、ホスアプレピタント
末梢性ドパミンD2受容体遮断薬
メトクロプラミド(プリンペラン®)、ドンペリドン(ナウゼリン®)
プリンペランとナウゼリンの違いについてはコチラ
プリンペラン®とナウゼリン®の違いと使い分け
中枢性ドパミンD2遮断薬
プロクロルペラジン、クロルプロマジン、ハロペリドール
リスペリドン、オランザピン
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
アルプラゾラム、ロラゼパム
抗ヒスタミン薬
クロルフェニラミン
化学療法時
化学療法に伴う嘔吐ではリスクに応じて使い分けます。
・高度催吐リスク →デキサメタゾン+5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬
・中等度催吐リスク→デキサメタゾン+5-HT3受容体拮抗薬
・軽度催吐リスク →デキサメタゾン
シスプラチンが高度催吐リスクの抗がん剤であることはおさえておきましょう。
3つの山があります。
最初は抗がん剤の影響で腸球クロム親和性細胞からのセロトニン放出が起こり、5日後まで続いています。→急性・遅発性嘔吐に5-HT3受容体拮抗薬が有効。
次に腸管でサイトカイン産生が亢進し、サブスタンスPの遊離や消化管運動が障害されます。→NK1受容体拮抗薬、末梢性D2遮断薬が有効。
最後に細胞が崩壊し内容物が放出されます。→遅発性にステロイドが有効。
国家試験問題で理解度をチェック!
第99回薬剤師国家試験 問264〜265より引用
60歳男性。肺がん治療のためシスプラチンとエトポシドの併用療法と放射線治療を行う予定である。主治医より制吐薬に関する問い合わせがあった。
薬剤師としての回答内容について誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 放射線照射に伴う悪心・嘔吐にはグラニセトロンが有効である。
2 急性悪心・嘔吐にはグラニセトロンが有効である。
3 遅発性悪心・嘔吐にはアプレピタントが有効である。
4 予測性の悪心・嘔吐にはロラゼパムが有効である。
5 グラニセトロンとアプレピタントは併用できない。
以上となります。
最後まで読んでいただき有り難うございます。
少しでも参考になれば幸いです。
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