アドレナリンの使用用途は幅広いですが、心肺停止の時には◯◯注射、気管支喘息の時には●●注射、アナフィラキシーショックの時には▲▲注射という使い分けが存在するのはご存知でしょうか。
これらはどうやって使い分けているのでしょうか?
薬学部の時も一時混乱したのでまとめておきます。
体内への入りやすさ、効きの早さ
一般的にアドレナリンの投与経路としては皮下注射、筋肉内注射、静脈注射が存在します。
血流の豊富さ
最も全身にまわりやすい(=血管内)のはそのまま血管内に入る静脈です。
皮膚と筋肉では、筋肉のほうが血流が多いので、静脈の次に全身に循環しやすいです。
さらに、皮膚ではα1受容体が多く、筋肉ではβ2受容体が多くなっています。(←動物と戦っているとき、牙や爪で出血しても止血しやすく、戦うための筋肉に多く血を巡らせる野生動物の名残)
よって皮下注射ではアドレナリンによって血管が収縮してしまい、血中濃度が上昇するのに時間がかかってしまいます。そのため緊急時には不向きです。
以上のことから全身循環への乗りやすさは静脈注射>筋肉内注射>皮下注射となります。
そしてその順番はそのまま効き始めるまでの速さにも直結してきます。
あとはアドレナリンの性質と病態を組み合わせる
アドレナリンはα作用、β作用を同等にもつ薬剤です。
主な病態としては心肺停止、気管支喘息、アナフィラキシーショックが挙げられますが、「全部静脈注射したらいいじゃないか」と思うことはないですか?
しかしながらアドレナリンはβ作用が強いため、投与量によってはVTやVFなどの不整脈を引き起こします。不用意に全身循環にたくさん乗せるべきではないのです。
心停止
心停止に対しては心臓にしっかり届くように静脈注射で用います。まずは止まっている心臓を動かすことが最優先ですのでここでは不整脈の副作用よりも優先されます。
アナフィラキシーショック
次にアナフィラキシーショックですが、1型アレルギーなのでヒスタミンなどの作用によって気管支収縮や血管拡張、血管透過性亢進の病態です。心臓に届かせる必要はない一方で、全身の血管に作用させる必要があるので筋肉内注射です。ショック状態ですので急いで改善させる必要があることからも筋肉内注射が選ばれます。
気管支喘息
最後に気管支喘息です。上記2つの病態に比べるとアドレナリンを効かせたい部位は気管支と限局的で、心臓に効かせる必要もないため皮下注射となります。
まとめ
・アナフィラキシー →筋肉注射
・気管支喘息発作 →皮下注射
・鼻出血 →ボスミンガーゼ
しっかり効かせたい部位と即効性を意識して区別しましょう。
国家試験問題で理解度をチェック!
第100回医師国家試験 F57より引用
56歳の男性。呼吸困難を伴う意識障害のため救急車で搬入された。庭木の手入れ中、蜂に刺され、数分後に倒れた。意識は混濁している。体温37.2℃。脈拍120/分、整。血圧76/48mmHg。胸部に軽度の喘鳴を聴取する。両手背に蜂の刺し傷、発赤および腫脹を認める。
最初に行う治療はどれか。a 輸液
b 酸素吸入
c アドレナリンの筋肉内注射
d 抗ヒスタミン薬の静脈注射
e 副腎皮質ステロイド薬の静脈注射
以上となります。
ものすごくざっくりですが、イメージが湧いたなら幸いです。
間違い等あればご指摘をお願い致します。
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