アセチルコリンで血管が拡張する理由

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作用機序
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アセチルコリンは血管平滑筋のムスカリン受容体に作用して血管を拡張しますが、どうやって拡張させているのでしょうか。

イラストを書いて整理してみました。

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ノルアドレナリンとの違いは?なぜ血管拡張する?

ノルアドレナリン(α1受容体に作用)や、アンジオテンシンⅡ(AT1受容体に作用)、TXA2は血管平滑筋収縮に働きます。

アセチルコリン(M1・M3受容体に作用)は最終的に血管平滑筋弛緩に働きます。

α1受容体も、M1やM3受容体もGqタンパクを介して反応が進みます。

Gq⇒PLC⇒PIP2がIP3とDGに分解⇒平滑筋収縮と考えてしまうと…アセチルコリンがどうやって血管を拡張させているのか混乱してしまいます。

アセチルコリンは血管内皮細胞にも作用している!

アセチルコリンは血管平滑筋に対しては上記の通り、M1受容体→Gqタンパクを介して収縮させます。

一方で血管内皮細胞にも作用します。

AChが血管内皮細胞で、受容体を刺激
⇒一酸化窒素(NO)合成酵素を活性化
⇒アルギニンからNO遊離
⇒NOは分子量が小さく極性もないため細胞膜を通過して血管平滑筋へ移行
血管平滑筋で、NOがグアニル酸シクラーゼ活性化
⇒GTPがcGMPへ変換される
⇒Gキナーゼ活性化
⇒ミオシン軽鎖ホスファターゼを活性化
⇒ミオシンの脱リン酸化
⇒平滑筋弛緩し、血管拡張

という経路をたどっています。

血管平滑筋と血管内皮細胞の2箇所で働きかけることが混乱しやすいポイントでした。

アセチルコリンは血管平滑筋を収縮させる一方、血管内皮細胞でNOを産生し、そのNOが血管平滑筋細胞へ移行して、結果的に血管が拡張するのですね。

このことを何に応用できるか?

このことを理解しておくと、生理学に役立つのはもちろんのこと、循環器疾患の理解にも繋がってきます。

冠攣縮性狭心症

冠動脈が一時的に攣縮(スパスム)を起こして血流が途切れてしまうために起こる狭心症です。

考えられている原因として、血管内皮細胞からのNOの産生や分泌が低下しているため冠動脈の血流が減少するというものです。

発作時以外は心電図は正常なため、誘発するためにアセチルコリンを用います。

血管内皮細胞が正常であればNOが産生・分泌され冠動脈は拡張するはずですが、この疾患ではNOが低下しているために血管平滑筋の収縮作用が打ち勝ってしまい、発作が起こります。


以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しでも参考になれば幸いです。

コメント

  1. ナカノ より:

    ニコチン酸系の末梢血管拡張薬である、ニコモールやニセリトロールに関して質問です。
    これらはGiタンパク質共役型のニコチン酸受容体に結合し、血管を拡張させるとのことですが、β刺激薬のようなGsタンパク共役型の平滑筋弛緩作用と機序がGsとGiと異なるにも関わらず、作用が同じです。
    ニコチン酸受容体での作用機序について教えてもらえないでしょうか。

    • pharmadoctor より:

      コメントありがとうございます。

      素晴らしい着眼点だと思います。
      調べてみたところ、二セリトロールのインタビューフォームによれば血管拡張作用は受容体を介するものではなく直接作用と考えられているようです。

      https://med.skk-net.com/supplies/products/item/PER_if.pdf
      13ページの薬理作用を参照ください。

  2. α1もM1,3もGqに分類されるのに平滑筋の挙動が逆なのがわからなかったヒト より:

    はじめまして!
    コメント失礼します!
    今迷っていたところを的確に説明してらっしゃって、感動してコメント送らせていただきました!
    ブログ頑張ってください!

    • pharmadoctor より:

      コメントありがとうございます!

      自分も薬学生の時に理解できずにいろいろと調べた記憶があります。

      少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。

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