作用機序

ヌシネルセンナトリウム(商品名スピンラザ)の作用機序

2017年5月18日

バイオジェン社が2016年12月に新薬申請した、脊髄性筋萎縮症治療薬のヌシネルセン。まだ承認はされてないようです。

※7月3日追記 承認されました。商品名スピンラザ®

アンチセンス核酸医薬品とのことですが、アンチセンス核酸医薬品とはなんでしょうか?

単語をひとつずつ見ていきましょう。

脊髄性筋萎縮症とは?

原因は、5番染色体に存在する運動神経細胞生存(Survival motor neuron:SMN)1遺伝子の変異や欠失です。

脊髄の運動神経である前角細胞が変性し、筋収縮刺激がうまく伝達されないため筋力の低下や、筋組織の萎縮を呈する疾患。難病指定の神経変性疾患。

発症年齢と重症度で4つの型に分類されます。
Ⅰ型は乳児期、
Ⅱ型は乳児期~幼児期、
Ⅲ型は幼児期~小児期、
Ⅳ型は成人期。

Ⅰの数字から重症、中等度・軽症。

常染色体劣性遺伝
根治療法はいまだ開発されていません。

SMN遺伝子のスプライシング異常

正常なSMN1遺伝子からは、転写・翻訳を経て、活性のあるSMNタンパク質がつくられます。

脊髄性筋萎縮症患者では、SMN1遺伝子が変異・欠失しているためSMNタンパクが産生されません。ですが、ヒトにはSMN1遺伝子とほぼ同じSMN2遺伝子がコードされているのでSMN2遺伝子からSMNタンパクが産生されてきます。

ただ、このSMN2遺伝子がいくつあるかが個人個人で違っています。そのため症状に違いがあるのです。

ちなみに、SMN2遺伝子のエキソンの7に変異を持っていると、うまくスプライシングが行われずに、80%の確率でエキソン7が切り出されてしまい、活性のないSMNタンパク質ができてしまいます。その結果、運動神経が変性してしまいます。
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アンチセンス核酸医薬品とは?

アンチセンス核酸とは、DNAやRNAと相補的に結合して、転写や翻訳を調整する合成核酸のことです。

ヌシネルセンは、mRNA前駆体のエキソン7下流のイントロン部分に結合し、エキソン7がスプライシングされるのを防ぐことによって、変異のあるSMN2遺伝子を持った患者でも活性のあるSMNタンパク質を産生できるようにします。

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ヌシネルセン(商品名SPINRAZA)prescribing informationより引用
(https://www.spinraza.com/content/dam/commercial/specialty/spinraza/splash/en_us/pdfs/spinraza-prescribing-information.pdf))

物理化学的性質

脊髄性筋萎縮症の病変部位は脊髄ですので、髄腔内注射で投与します。

核酸医薬品なので塩基が豊富で水素結合を形成しやすく水溶性が高いため、血液脳関門は通過しないようです。

エキソヌクレアーゼ(外側からひとつずつヌクレオチドを切断していく酵素)によって代謝されるようなので、すぐに分解されないように5’→3’のホスホジエステル結合のO原子をS原子に置換してるみたいです。

水溶性が高いためプリン体と同じように尿中に排泄されるとのこと。

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医学部へ学士編入した薬剤師です。医学や薬学について書いています。ご質問やご指摘があればお気軽にどうぞ。