医療従事者に必須の知識 病態

悪性症候群と悪性高熱症の違い

2018年11月16日

名前がよく似ていてごっちゃになるシリーズです。悪性症候群と悪性高熱症、どう違うのでしょうか?

違いについて調べてまとめてみました。

悪性症候群と悪性高熱症

早速まとめです。薬が違う→遭遇する診療科も違う

悪性症候群:ドパミンの急激な遮断・減量(D2遮断薬開始もしくはレボドパ中断)。主に精神科

悪性高熱症:リアノジン1受容体の遺伝子異常+ハロタンもしくはスキサメトニウム。麻酔科

 

解説

悪性症候群

症状:発熱、錐体外路症状(振戦・筋固縮)、意識障害

抗精神病薬などのドパミン受容体遮断薬を開始したり、レボドパなどのドパミン作動薬を中断したりすると起こる症候群。

詳細な機序は不明ですが、ドパミンが急激に減少することで起こってきています。だからこそ錐体外路症状が出ているというのが悪性高熱症との違いですね。

また、ドパミンが減少することで起こっているのでドパミン受容体刺激薬を用いることもあります。

悪性高熱症

症状:発熱、筋硬直

下の図に出てくる筋小胞体のカルシウムチャネルであるリアノジン受容体の遺伝子異常がベースにあります。→頻度としては7400例に1例とまれ。

その異常を持つ患者さんにハロタン(吸入麻酔薬。今はほぼ使われてない)やスキサメトニウム(脱分極性筋弛緩薬)を用いることで症状が起こります。

治療薬は共通!ダントロレン

薬がみえる vol.1 より引用

ダントロレンはリアノジン受容体に結合することで、筋小胞体からのカルシウム放出を抑制→筋収縮を抑制します。

悪性症候群、悪性高熱症いずれにおいても筋の異常な収縮が起こっているのでダントロレンが効きます。

理解度を薬剤師国家試験問題で確認!

第103回薬剤師国家試験 問294295より引用

26歳男性。統合失調症の診断を受け、ハロペリドールを処方されていた。

手の震え、体のこわばりやアカシジア(静座不能)などの副作用の出現により服薬を自己中断するため、入退院を繰り返している。

3ヶ月前から以下の処方に変更となった。

(処方)

オランザピン錠10mg 11(11) 11回 就寝前 7日分

3ヶ月前の検査データ:体重 68kg、空腹時血糖 110mg/dLLDLC(低密度リポタンパク質コレステロール) 130mg/dLHDLC(高密度リポタンパク質コレステロール) 47mg/dLTG(トリグリセリド) 120mg/dL

現在、患者の精神状態は安定しているが、食欲が亢進し、栄養指導しても過食になることが多い。

現在の検査データ:体重 76kg、空腹時血糖 110mg/dLLDLC 138mg/dLHDLC 42mg/dLTG 150mg/dL

服薬指導の際に、患者から「体重増加は困るので、薬を変えて欲しい」との訴えがあった。

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この患者の病態及び治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

1.オランザピンの服用により糖尿病を発症している。

2.錐体外路症状は、漏斗下垂体のドパミン神経の過剰興奮によって起こる。

3.オランザピンはハロペリドールよりも錐体外路症状を起こしにくい。

4.オランザピンによる悪性症候群の発症はない。

5.体重増加はオランザピンに特徴的な副作用であり、他の抗精神病薬では認めない。

解答は3。

1:体重は増加しているものの、空腹時血糖は診断基準126未満なので糖尿病を発症していません。ましてや診断がつくためには2回とも高血糖でなくてはダメなので二重の意味で×。

2:漏斗下垂体のドパミン遮断で起こるのが高プロラクチン血症。しかもドパミンが過剰になって起こるのは中脳辺縁系の陽性症状。

3:正解。第2世代(非定型)抗精神病薬は5-HT2受容体の遮断作用も持ちます。そのためセロトニンによるドパミン神経の抑制が解除され黒質線条体系のドパミンが減少しにくく錐体外路症状をきたしにくいです。

4:D2受容体遮断作用を持つ抗精神病薬には悪性症候群のリスクがあります。

5:非定型抗精神病薬は定型に比べて体重増加の副作用が多いです。クロザピンから誘導されて作られたオランザピン、クエチアピンも体重増加をきたしやすい薬剤です。

いかかでしたでしょうか。少しでもお力になれれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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医学部へ学士編入した薬剤師です。医学や薬学について書いています。ご質問やご指摘があればお気軽にどうぞ。