医療従事者に必須の知識 病態

R-CHOP療法の前にチェックすべき感染症は?

2019年5月18日

免疫抑制剤や、TNF-αに対する抗体製剤やCD20抗体など免疫を対象とした薬剤は、免疫力を強力に抑制し、関節リウマチや悪性リンパ腫を快方へ向かわせます。

ですが、根治しない感染症(B型肝炎、結核など)においてはウイルスや細菌の増殖を押さえ込んでくれている免疫を抑制してしまい、再燃させてしまうリスクがあります。

なので薬剤師は抗TNF-α抗体製剤や抗CD20抗体製剤が処方された際にカルテをチェックしてそれらの感染症の既往がないかを確認するのです。

102回の薬剤師国家試験にそれを取り上げた問題が出題されていましたので記事にしてみました。

問題にチャレンジ

第102回薬剤師国家試験 問300より引用

62歳女性。3年前に悪性リンパ腫と診断され、R-CHOP療法が施行された。R-CHOP療法施行直前の検査で肝機能検査値に異常はなかった。R-CHOP療法4コースを終了後、定期的に通院していたが、あるときALT 742U/LAST 1,354U/Lと上昇したため入院した。

エンテカビルの投与によりALT及びASTは低下した。本人に確認したところ、10年前の献血時にHBc抗体陽性を指摘されていたことが判明した。

本症例に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

1 本症例の悪性リンパ腫は、Hodgkinリンパ腫である。
2 ALT及びASTの上昇は悪性リンパ腫の再発に起因する可能性が高い。
3 R-CHOP療法により、肝組織が直接障害され、ALT及びASTが上昇した。
4 R-CHOP療法開始後にHBVに再感染した可能性が高い。
5 R-CHOP療法によりHBVが再活性化した可能性が高い。

答えは5。

1:処方薬から疾患を想起させるという薬剤師ならではの観点が問題になっているのが面白いですね。ちなみに医師国家試験では症状やリンパ節の生検画像から疾患を考えさせるのが一般的なのです。

日本では非ホジキンがほとんどで、CHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)が行われます。B細胞型ならばリツキシマブを併用するのでR-CHOPと呼ばれます。

ホジキンにはABVD療法(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)。なので×。

2:10年前の献血時検査でHBc抗体が陽性だったので感染の既往があります。R-CHOPによって免疫が低下し、増殖を抑えきれなくなり再燃してしまったのでしょう。悪性リンパ腫の再燃ではないので×。

3:CHOPの1つ、ビンクリスチンは肝障害の副作用あるんですが、それが起こるならもっと早い時期に出るはずで、本症例の場合はR-CHOP療法4クール終わって定期的に通院していたというかなり長い時間が経っていますので薬剤性の肝障害とは考えにくいので×。

4:そもそもDNAウイルスであるB型肝炎ウイルスは、宿主の肝細胞のDNAに組み込まれているので完全に除去することはできません。再感染という言葉は当てはまりません。

感染経路からも考えてみます。

HBVは血液か、膣粘膜を介した感染の2通りです。

血液感染は昔にあった輸血や注射針の使い回しによるもので、つまり医原性です。あってはならないものですね。問題文にそのような記載はありません。

膣粘膜を介した感染は、分娩時の母から子へ、そして性交渉です。62歳女性では考えにくいので×。

 

5:これが正解です。免疫抑制作用のある薬剤で再燃したB型肝炎をDe novo B型肝炎といいます。劇症肝炎に移行しやすく予後の悪い疾患です。なので予防が第一!

処方医の先生方はちゃんとHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体を検査してくださっていたことを思い出します。

HBs抗原があったり、HBVーDNA量が多い場合にはエンテカビルなどの核酸アナログを投与。この問題で覚えてしまいましょう。

免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインより引用

それぞれの抗体の意義がわからなくなったらコチラ
B型肝炎ウイルスとマーカーの意義

疾患名で検索していると薬剤師国家試験が引っかかることがあって、知識の確認のために解いてみていますが、非常によく作られています。近年の医師や薬剤師の国家試験は臨床現場の内容とよくマッチしていて復習・勉強になります。

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医学部へ学士編入した薬剤師です。医学や薬学について書いています。ご質問やご指摘があればお気軽にどうぞ。